ドラゴドクトリン(その他表記)Drago Doctrine

改訂新版 世界大百科事典 「ドラゴドクトリン」の意味・わかりやすい解説

ドラゴ・ドクトリン
Drago Doctrine

1902年12月29日,アルゼンチンの外相ルイス・マリア・ドラゴLuis María Drago(1859-1921)がアメリカ合衆国大統領T.ローズベルトあての書簡の中で表明したもので,債権国が債務取立てに武力行使することに反対した宣言。そのきっかけは,同月9日,ベネズエラ債務不履行に業を煮やしたドイツ政府が,イギリス(後にイタリアも参加)の協力を得て武力でベネズエラの港湾を封鎖し,関税収入を押収しようとしたことにあった。アルゼンチンでは1868年に法学者のカルロス・カルボが債権取立てのための武力行使を批判したいわゆるカルボ条項を発していたが,ドラゴはそれを踏襲して,(1)債務国は債務支払いの義務を負うが,債務のゆえに武力干渉の対象となるべきではない,(2)ベネズエラに対するヨーロッパ諸国の軍事力の行使は領土侵犯であり,モンロー主義にそむく,と主張した。この宣言は国際的な承認を得るには至らなかったが,債権国の武力行使にある程度の歯止めをかける効果をもったといえよう。
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百科事典マイペディア 「ドラゴドクトリン」の意味・わかりやすい解説

ドラゴ・ドクトリン

国家間の債務不履行は武力干渉あるいは領土占領の正当な理由にはならないという主張。1902年ベネズエラ紛争に関連してアルゼンチン外相L.M.ドラゴが行ったもの。この原則は1907年ハーグ国際会議において条件付で採択された。日本も1911年に批准している。現在当事国32。戦争違法化起点を成す議論として注目される。

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