都市中心部の常住人口(夜間人口)が減少し,これを取り囲む周辺部に顕著な人口増加がみられる現象で,人口増減の分布がドーナツに似ているため,このように俗称される。都心人口の空洞化現象ともいう。東京都区部や大阪市では全域の人口が減少している形であるが,近年では中規模都市でも中心部の人口減少,空洞化がみられるようになってきた。近代化の進展に伴ってみられる職住分離の傾向に加えて,いわゆる都心機能の集中と純化,騒音,大気汚染,地上交通混雑の激化,地価の高騰などの今日的な諸問題が複合して都市中心部の居住環境の悪化を招き,人口の郊外への流出,都心居住人口の減少というパターンが形成された。巨大都市の都心では,昼間は数十万人の通勤者が集中する反面,夜間には数十人程度の常住者しか居住しない地区さえあり,都心人口の空洞化は社会的な問題になりつつある。ドーナツ化現象は外国でもみられる現象で,ニューヨークなどは早くからその対策に苦慮している。
執筆者:鈴木 富志郎
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… 23区の人口は1965年に最高の889万人に達したあと漸減を示し,1955年代から千代田・中央両区で人口減少が始まり,90~95年には練馬,江戸川両区を除く21区で人口が減少した。この区部人口の減少は,一般に大都市のドーナツ化現象として知られる。東京都区部の人口減少のおもな原因は,旧市域では業務地域の拡大,都市公害などによる生活環境の悪化や地価の高騰などであるが,新市域では地価高騰に起因する住居費の上昇がおもな原因と考えられる。…
…このグリーンベルトの外側には20世紀初期に田園都市,第2次大戦後にニュータウンが建設され,産業,人口の分散化を図っており,広域都市圏計画のモデルとなっている。このためロンドンの人口は都心から郊外へ移動しつつあり,シティでは1851年より,インナー・ロンドンでは1901年,アウター・ロンドンでは1951年よりそれぞれ人口が減少して顕著なドーナツ化現象を示している。また第2次大戦時の空襲で大きな被害を受けた都心部では大規模な再開発計画が実施されており,バービカン地区では1973年以来,高層の住宅,オフィス群,ホール,ショッピング・センターを有機的に結合した改造計画が推進された。…
※「ドーナツ化現象」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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