ナガカメムシ(英語表記)lygaeid bug

改訂新版 世界大百科事典 「ナガカメムシ」の意味・わかりやすい解説

ナガカメムシ (長亀虫)
lygaeid bug

半翅目ナガカメムシ科Lygaeidaeの昆虫総称触角は4節で側面から見たとき,複眼の中央と頭頂を結ぶ線より下から出ている点で,近縁ヘリカメムシ科(触角は上記の線より上から出る)と区別される。膜質部の翅脈は粗く4~5本があるのみである。細長い種が多いのでこの名がある。前腿節はときに肥大し下面にとげがある。大きな科で世界から3000種以上も記録され,日本には50種以上が分布する。植食性であるが,ときに食虫性を兼ねる種類もいる。カンショコバネナガカメムシCavelerius saccharivorusは九州,琉球,台湾に分布し,扁平で細長く翅の短い種類でサトウキビ害虫として知られ,ヒョウタンナガカメムシ類Eucosmetus胸部がヒョウタン形でアリ類に酷似し,イネ科雑草の種子などを吸食する。オオメナガカメムシPiocoris variusやヒサゴナガカメムシNeomizaldus lewisiは食虫の習性もある。また複眼が突出した小型のメダカナガカメムシChauliops fallaxダイズ,アズキの葉裏につき多少害がある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ナガカメムシ」の意味・わかりやすい解説

ナガカメムシ
ながかめむし / 長亀虫
長椿象

昆虫綱半翅(はんし)目異翅亜目ナガカメムシ科Lygaeidaeの昆虫の総称。体長は数ミリから15ミリで、5~10ミリのものが多い。普通長形で、触角は四節からなり、複眼中央と頭額先端を結ぶ線より下から出る。頭頂部後方には普通2個の単眼がある。小楯板(しょうじゅんばん)は小さく、前翅膜質部の脈は5、6本でほぼ平行している。地上草間にすむものが多いが、樹上性の種もある。多くは植食性であるが、ときにほかの小昆虫を捕食するものが知られている。日本には100種余りが分布し、九亜科に分類される。

 日本産のおもな種として、ジュウジナガカメムシTropicothorax curciger(植食性で、カモメヅルなどに寄生)、オオメナガカメムシPiocoris urarius(雑食性で、小昆虫を捕食するが、植物から吸汁もする)、チャモンナガカメムシParadieuches dissimilis(植食性で、ヤマグワの実に群がる)などが知られ、南日本から琉球(りゅうきゅう)諸島にはサトウキビ害虫で有名なカンショコバネナガカメムシCavelerius saccharivorusが分布する。

[林 正美]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ナガカメムシ」の意味・わかりやすい解説

ナガカメムシ
Lygaeidae; lygaeid bug

半翅目異翅亜目ナガカメムシ科に属する昆虫の総称。体長 10mm以下のものが多い。体は卵形または細長く,色彩は目立たない地味なものと,鮮かな赤などに彩られるものとがある。頭部は短く,触角は長く4節から成り,顔面の下方から生じる。複眼はやや突出し,その間に2個の単眼がある。口吻は4節。前胸はしばしば中央部がくびれてひょうたん形をなす。半翅鞘は長く,膜質部はよく発達し,顕著な5~6本の翅脈がある。多くは植食性で地表や植物上にすむが,樹皮下や葉鞘に隠れる種もある。世界に 3000種以上が知られる。日本産は約 150種で,サトウキビの大害虫であるカンショコバネナガカメムシ Cavelerius saccharivorusや,橙赤色の斑紋のある美麗種マダラナガカメムシ Lygaeus equestris,ジュウジナガカメムシ Tropidothorax crucigerなどが知られている。 (→異翅類 , 半翅類 )  

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百科事典マイペディア 「ナガカメムシ」の意味・わかりやすい解説

ナガカメムシ

半翅(はんし)目ナガカメムシ科に属する昆虫の総称。体長15mmを超す種類はほとんどない。楕円形で暗色,悪臭は強くない。地上や植物上にすみ,植物の汁を吸う。サトウキビに加害するカンシャコバネナガカメムシや豆類に加害するメダカナガカメムシなどは害虫として知られる。全世界に約4000種。

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