ナム・ジュン・パイク(読み)なむじゅんぱいく(英語表記)Nam June Paik

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ナム・ジュン・パイク」の意味・わかりやすい解説

ナム・ジュン・パイク
なむじゅんぱいく
Nam June Paik
(1932―2006)

TV、ビデオなどを用いたパフォーマンス(ビデオ・アート)、インスタレーション仮設または設置型作品)で知られる韓国人アーティスト。韓国語名は白南準(ペクナムジュン)。ソウルに生まれ、東京で美術史、音楽史、哲学を、ドイツで音楽史、作曲を学んだ後、作曲家ジョン・ケージとの出会いやフルクサスへの参加をきっかけに、パフォーマンス的、造形的要素を強める。1960年代からテレビモニターやビデオの使用を開始し、世界中の人々が一斉に同じ映像、同じ時間を共有することのできるこの新しいメディアの可能性を早くから評価した。しかし一方で、見る者がこれらの映像を一方的に受け取るのではなく、その創造に主体的に加わることを重視し、観客がモニター画面の色や形を自由に変えられる『参加TV』Participation TV(1969)を発表したり、70年にはビデオ・シンセサイザーの共同開発も行った。また、単に映像を流すための道具としてではなく、テレビモニターの形そのものを使って構成した一群の作品があり、十字架型にモニターを組み立てた『TVクロス』TV Cross(1966)、ピラミッド型に積み上げた『ビラミッド』V-yramid(1982)などがその例である。そのほか、1964年より共演を続けたチェロ奏者、シャルロッテ・モーマンCharlotte Moormanのための作品に、『生ける彫刻のためのTVブラ』TV Bra for Living Sculpture(1969)、『TVチェロ』TV Cello(1971)などがある。77年には衛星放送を用いた最初のイベントを行い、また84年の回顧展(東京都美術館)で来日した際には、ヨーゼフ・ボイスとのパフォーマンスも行った。

[蔵屋美香]

『ナム・ジュン・パイク著、和多利志津子監修『バイ・バイ・キップリング』(1986・リクルート出版部)』『ナム・ジュン・パイク著、伊東順二構成『あさってライト』(1988・パルコ出版局)』『ナム・ジュン・パイク著『フィード・バック&フィード・フォース』(1993・ワタリウム美術館)』『Nam June Paik, John G. Hanhardt:The Worlds of Nam June Paik(2003, Guggenheim Museum Publications)』『Nam June Paik, John G. Hanhardt, Jon Ippolito:Nam June Paik;Global Groove 2004(2004, Guggenheim Museum Publications)』

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世界大百科事典(旧版)内のナム・ジュン・パイクの言及

【パフォーマンス】より

… 1960年代の日本のパフォーマンス活動が与えた影響には計り知れないものがあり,その遺産を演劇や映画に活用した芸術家の一人として寺山修司がいる。70年代の日本のパフォーマンス活動そのものは,田中泯(みん)らの〈舞踏〉を除くと,全体として活気に乏しかったが,84年にナムジュン・パイクNam Jun Paik(1932‐ )とヨゼフ・ボイス(いずれも〈フルクサス〉のメンバー),より若い世代のローリー・アンダーソンLaurie Anderson(1947‐ )が来日し,〈パフォーマンス・ブーム〉が再燃しはじめ,ビデオやコンピューターの電子テクノロジーを駆使した新しいパフォーマンスも試みられるようになった。電子テクノロジーによって身体環境が攻囲され,身体的な一回性や偶然性が〈プログラム〉化されかねない状況のなかで,80年代のパフォーマンスが電子テクノロジーを用いながらそうした一回性を再活性化できるかどうかは,まさに今後の課題である。…

※「ナム・ジュン・パイク」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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