ボイス(読み)ぼいす(英語表記)Joseph Beuys

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ボイス」の意味・わかりやすい解説

ボイス
ぼいす
Joseph Beuys
(1921―1986)

ドイツの美術家。ノルトライン・ウェストファーレン州西部のクレーフェルトに生まれデュッセルドルフで没した。デュッセルドルフ芸術アカデミーで学び、1961~72年、同校教授を務める。62年から国際的な前衛芸術グループであるフルクサスに参加し、67年にドイツ学生党を結成、74年に自由国際大学を設立した。また緑の党にも参加した。ルドルフ・シュタイナー人智学の影響を受け、直接民主制エコロジーなどを中心とした社会変革の運動を、芸術作品として提示した。具体的には「アクション」とよばれる行為による芸術、オブジェ作品、そして討論など、従来の美術の枠を超えた多様な形式をとる。これはすなわち、芸術の概念を、理想社会の実現をめざす自由で創造的な活動すべてにまで拡張しようとするものであり、彼はこうした考え方に基づく自らの作品を総称して「社会彫刻」とよんでいる。彼の活動は政治的には十分な成功を収めたとはいえないかもしれないが、芸術を社会と直接に関わる活動とみなす彼の考え方は、その後の現代美術の動向に深い影響を与えた。代表作に『脂肪椅子』(1964)、『7000本の樫の木』(1982―87)などがある。

[大谷省吾]

『ハイナー・シュタッヘルハウス著、山本和弘訳『評伝 ヨーゼフ・ボイス』(1994・美術出版社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ボイス」の意味・わかりやすい解説

ボイス
Boyce, William

[生]1710頃.ロンドン
[没]1779.2.7. ロンドン
イギリスの作曲家,オルガン奏者。セント・ポール大聖堂の少年聖歌隊にいたとき M.グリーンにオルガンを学び,1734年オックスフォード聖堂のオルガン奏者,36年聖ミカエル聖堂のオルガン奏者を経て王室付属礼拝堂の作曲家となった。 45年音楽の出版を始め,55年グリーンの跡を継いで王室オーケストラの楽長,58年王室付属礼拝堂のオルガン奏者などを歴任したが,その後耳を悪くして現職を退いた。おもな業績は,『教会音楽集』 Cathedral Music (3巻,1760~73) の出版,『ペレウステティス』 (1740) ほか多くの教会音楽と劇場音楽,12曲のトリオ・ソナタと8曲のシンフォニーの作曲。

ボイス
Beuys, Joseph

[生]1921.5.21. クレーウェ
[没]1986.1.24. ジュッセルドルフ
ドイツの美術家。高校卒業後,第2次世界大戦中ドイツ空軍にパイロットとして従軍戦後 1947~52年ジュッセルドルフ美術学校で学んだ。 1960年代にフェルトラードなどの意表をつく物体による作品や,数々のハプニングを展開。 63年「フルクサス」のメンバーとなる。またジュッセルドルフ美術学校の教授として,同地をドイツ現代美術の中心地に高めた。ドイツ学生党,自由大学委員会などを結成,自由で新しい形式の教育を提唱し実践した。 84年来日。

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