ヌト(その他表記)Nut

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヌト」の意味・わかりやすい解説

ヌト
Nut

エジプト神話の女神。ディオスポリス・バルバで崇拝された天神ゲブ双生児の妹だったが,レーの意にそむき知らぬ間にゲブと一緒になった。2人は初め重なり合っていたがシューが天を差上げたので,ヌトは弓なりになって手足の指で身を支え,星のちりばめられたその腹部は天の穹窿を形づくった。レーの娘として,ヌトも太陽の母とされ,毎朝太陽は彼女の胸から生れ出るものとされた。また死者の守護神ともみなされた。雌牛の形や,頭上に丸い壺を載せた人間の形で表わされる。オシリス,ハロエリス,セトイシス,ネブテュスは彼女の子供である。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヌト」の意味・わかりやすい解説

ヌト
ぬと
Nut

エジプト神話で、原初の水を表すヌーに対応する女性形の名をもつ原初の神性。大地に覆いかぶさる女性の姿をもって表される。普通、体には星がちりばめられ、男神シューが下から体を支えている。ヌトは大地の神ゲブの妻で、男神オシリスとセト、女神イシスとネフティスを生んだが、シューによってゲブとの間を分け隔てられたという神話と、地上の人間が太陽神ラー反抗を企てたときに大地から自分の体を引き離し、シューがこれを助けたという神話とがある。雌牛の形で表されることもある。

矢島文夫


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

南海トラフ臨時情報

東海沖から九州沖の海底に延びる溝状の地形(トラフ)沿いで、巨大地震発生の可能性が相対的に高まった場合に気象庁が発表する。2019年に運用が始まった。想定震源域でマグニチュード(M)6・8以上の地震が...

南海トラフ臨時情報の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android