ゲブ(読み)げぶ(英語表記)Geb

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゲブ」の意味・わかりやすい解説

ゲブ
げぶ
Geb

古代エジプトの創造神話に出てくる男神。原初の創造神(ヘリオポリス神殿での伝承ではアトゥム「完全なもの」、のちに太陽神ラーと同一視された)が生んだ男神シューと女神テフヌトが結び付いて、男神ゲブと女神ヌトが生まれた。ゲブは大地を表し、天空を表す妹の女神ヌトを妻とした。初めこの2神は抱き合っていたが、父神シューが2神を引き離してヌトを天上に持ち上げ、ゲブを地上に横たえたといわれ、墓陵壁画にはしばしばこの情景を示す絵画が描かれている。またゲブは、ときにアヒル頭上にのせた姿で描かれているが、これは、大地が原初のアヒルから生まれた卵から現れたとする考え方を反映している。ゲブとヌトの結合により、男神オシリス、女神イシスとネフティス、そしてオシリスの弟にあたる男神セトが生まれた。なおゲブは、ギリシアの伝承などからセブあるいはケブ(ケーブ)ともよばれる。

矢島文夫

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ゲブ」の意味・わかりやすい解説

ゲブ
Geb

古代エジプト神話の大地の神。大気の神シューおよび湿りけの女神テフヌト息子姉妹の天空の女神ヌトと結婚し,オシリスイシスセトネフテュスの4子をもうけたといわれ,別の伝説では,太陽神のレーも,この夫婦の子で,ゲブはすべての神々のなか最古の存在であるともいう。

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