てん‐じん【天神】
[1] 〘名〙
① 天の神。あまつかみ。
※令義解(833)
神祇「天神者。伊勢。〈略〉出雲国造斎神等類是也」
※
今昔(1120頃か)一三「此天神・冥道などの守護の為に来給ふにかとぞ、人疑ける」 〔史記‐殷本紀〕
※栄花(1028‐92頃)浦々の別「此天神に御ちかひたててざえおはする人にて」
③
能面の一つ。鬼神系の面で、菅原道真の
怨霊を主人公とする「雷電
(らいでん)」の
前ジテや、「金札
(きんさつ)」「
藍染川(あいそめがわ)」などに用いる。
※申楽談儀(1430)面の事「天神の面、天神の能に着しよりの名也」
④ 袍・直衣(のうし)などを着た公卿風の人。
⑤
上方で、大夫の次位の
遊女のこと。揚代がかつて二五匁であったので、
北野天神の
縁日の二五日にちなんだもの。文化(
一八〇四‐一八)の頃、「天神」の文字ははばかりがあるとして「
転進」と書くようにもなった。天神女郎。
天職。
※俳諧・西鶴大句数(1677)九「くれの月太夫天神位つめ 帯に白雲厂に玉章」
※手鎖心中(1972)〈
井上ひさし〉
亀戸「おれは
梅干をしゃぶったあと、〈略〉天神様まで頂かないと気がすまない」
※三人妻(1892)〈尾崎紅葉〉前「三線(みすじ)の師匠ならば〈略〉、いつも天神に結ひ」
[2]
① 菅原道真の神号。
※
江談抄(1111頃)四「此詩及
二後代
一、菅家人室家令
レ尋
二北野一令
レ詠之間、天神令
レ教曰」
② 古代
氏族の
種別。神別
(しんべつ)の一。天つ神の後裔とされる氏族の称。中臣・忌部・
物部・
大伴・久米・弓削・曾禰・佐伯などの
諸氏をさす。
③ 神格の
呼称。主として
雷神や疫神、またはそれを祭る神社に対する。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
デジタル大辞泉
「天神」の意味・読み・例文・類語
てん‐じん【天神】
1 《「てんしん」とも》天の神。あまつかみ。⇔地祇/地神。
2 菅原道真を祭った天満宮のこと。また、その祭神である道真のこと。今日では多く学問の神として信仰されている。天神様。
3 《揚げ代が25匁であったところから、北野天神(北野天満宮)の縁日の25日に関係づけていう》江戸時代、上方の遊女の等級の一。大夫の次位。また、その遊女。天職。
4 「天神髷」の略。
5 梅干し。また、その種の中にある実のこと。
6 能面の一。怒相の神霊用の面。菅原道真の霊を主人公とする「雷電」の前ジテのほか、「舎利」のツレなどに用いる。
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
天神【てんじん】
天界にいる神として,地祇(ちぎ)と並び称される。雷・雨・水などと結びつけられ,荒ぶる神として恐れられる一方,農耕の神としても信仰された。また菅原道真の神号としても知られる。道真没後,京に雷雨などの災禍が続くと,御霊(ごりょう)信仰や雷神信仰の流行でこれを道真の怨霊(おんりょう)のせいとして恐れ,道真の霊を北野にまつって天満大自在天神と称し,火雷天神とも呼んだ。天に住み,また天から降臨する神一般を意味する天神が道真の神号となり,邪悪をこらす神として,さらには文芸の神としてあがめられた。江戸時代には寺子屋の神とされ各地で天神祭が行われた。→天満宮
→関連項目北野|北野天満宮
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
天神
てんじん
宗教学上での天神(てんしん)sky godとは、在天の神というより天そのものを人格化した神をいい、未開社会には広くみられ、至高神の地位を占めることが多い。日本では天神(てんじん)・地祇(ちぎ)と並称され、地祇(くにつかみ)(国神)に対する天神(あまつかみ)をさす。神話では高天原(たかまがはら)に座(いま)す神々、また高天原から国土に降臨した神とその子孫の神々をいい、日本の神祇を区別づける重要な標準とされた。なお、後世はもっぱら菅原道真(すがわらのみちざね)を祭神とする天満天神(てんまんてんじん)をさす称号となった。
[牟禮 仁]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
普及版 字通
「天神」の読み・字形・画数・意味
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報