日本大百科全書(ニッポニカ) 「ネオファシズム」の意味・わかりやすい解説
ネオファシズム
ねおふぁしずむ
neo-fascism
第一次世界大戦後、イタリア、ドイツ、日本などで現れた急進的ナショナリズム体制を古典的ファシズムとよぶのに対し、第二次大戦後のファシズム傾向をネオファシズムという。すなわち、第二次大戦における日独伊枢軸国の敗北がファシズムの終焉(しゅうえん)を意味するものではなかった。1950年代のアメリカにおけるマッカーシズム、60年代に入ってのドイツ国家民主党(NPD)、イタリア社会運動などの台頭が顕著なネオファシズムの動きである。こうした際だった事例とは別に、経済操作とイデオロギー操作を通じてファシズム的体制が形成される条件が現代社会には整っており、多くの国で現実化しているという指摘もある。経済理論の発展は恐慌の危険を回避させ、マス・メディアの発達は操作的情報の大量伝達と大衆の関心を娯楽などへそらせることを可能にした。このように、大衆にそれとは気づかせずに独裁体制を形成する危険が現代には存在する。
[大谷博愛]