改訂新版 世界大百科事典 「ノク」の意味・わかりやすい解説
ノク
Nok
アフリカのナイジェリア中部,ザリア地方の村。1931年同村のスズ鉱山からテラコッタ製の人頭2個が発見された。その後ニジェール川とベヌエBenue川の合流点の北方に位置する,東西480km,南北330kmにおよぶ広大な地域で,ノクの人頭像と同じ様式のテラコッタ製人像が数百点出土した。これらのテラコッタ像は,最初の発見地にちなんで,ノク美術ないしノク文化(文明)と称される。前500年ころから後200年ころにかけてのものである。造形は抽象性の強いものが多く,最も単純化された人頭には,球,円錐(しばしば逆円錐),円筒に還元された例がある。顔面は,外側に反った唇と,大きな目(通例は逆三角状を呈するが,ときには半円のこともある)が特色で,ひとみ,鼻,耳,口に丸い穴があけられる。頭部の大きさは実物大以下で,俗に〈ノクの小像文化〉とも呼ばれる。これらの頭部にはもとは首から下の身体がついていた。とくにひざを曲げた脚が豊かな肉付けで表される。身体と頭部との比例は,いわゆる〈アフリカ的比例〉で,六等身以下である。ノク文化の彫刻はかなり完成した様式を示すため,それに先立つ時代の,まだ発見されていない彫刻があるかもしれない。また,ノク文化を直接継承する文化はないが,ニジェール川の下流の西方で10世紀以降に栄えたイフェ文化(イフェ王国)は,ノク文化と関係があると考えられる。
執筆者:木村 重信
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報