改訂新版 世界大百科事典 「ハマベンケイソウ」の意味・わかりやすい解説
ハマベンケイソウ
sea lungwort
oyster plant
Mertensia maritima (L.) S.F.Gray ssp.asiatica Takeda
東北および北海道の海岸の砂地に生えるムラサキ科の多年草。全体が多肉質で,ベンケイソウ科の植物に似ている。茎は砂地に倒れて長さ1mに達し,よく枝を分かつ。葉は卵形で長さ3~7cm,幅2~5cm。花は7~8月に,まばらなカタツムリ状花序につく。花冠は鐘形で長さ8~12mm,青紫色で美しい。やや下向きに開き,先端は5裂する。萼筒は5深裂し,裂片は鋭くとがる。子房は4深裂し,花後四つの分果となる。分果は肉質。東北アジア,サハリン,千島列島,アレウト列島の海岸に広く分布する。
ハマベンケイソウ属Mertensia(英名bluebell)は,北半球の亜寒帯・寒帯域で分化している一群で約30種があり,とくに北アメリカ大陸の西側に多くの種がある。海岸生で多肉質というハマベンケイソウの性質は,属の中では例外的なものである。日本ではほかに北海道の高山にエゾルリソウM.pterocarpa (Turcz.) Tatew.et Ohwi var.yezoensis Tatew.がみられる。
執筆者:矢原 徹一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報