はやにえ

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

はやにえ
prey-impaling behavior

モズ類が捕えた獲物を樹木のとがった枝や有刺鉄線のとげなど鋭利な物に突き刺しておく習性。この獲物がいけにえのように見えたことから「モズのはやにえ(早贄)」,あるいは単に「はやにえ」といわれる。モズの仲間は肉食で,獲物は昆虫やトカゲ,カエル,ミミズ,小鳥,ネズミまで多様な動物が含まれ,これらがはやにえにされる。食べられずに干からびてしまうこともあるが,のちに食べられることもあるため,貯食であると考えられている。1990年代の調査によると,ヨーロッパに生息するオオモズは冬季にはやにえをし,おもにその 62%が 9日以内に消費され,セアカモズ Lanius collurio は繁殖期にはやにえをし,88%が消費されたという。おもに夕暮れや夜明けに消費され,6%はスズメバチなどに食べられている。種によっては繁殖期だけに見られるものもあるため,単に貯食だけでなく,雌をひきつける役割を果たす場合もあるとされる。モズ類は脚や趾(あしゆび)がタカ類ほど強くなく,獲物を押さえて引きちぎれないため,とがった物に刺して引きちぎって食べ,その残りものがはやにえであるという説もある。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

はやにえ
はやにえ / 早贄

モズ類には、とらえた食物を小枝や刺(とげ)に突き刺したり、ひっかけたままにしておく習性があり、それら小枝などに放置されたものが「モズのはやにえ」とよばれる。はやにえにされるものとしては、昆虫、トカゲ、カエル、魚、小哺乳(ほにゅう)類、小鳥などがある。この習性は1年を通じてみられ、とくに春から秋にかけてよくみられる。はやにえにされたものの一部、あるいは多くは、そのあとに食べられる。ただし、この習性が食物の貯蔵を目的にして発達してきたものかどうかは明らかでない。モズ類には本来、獲物を小枝や刺などに突き刺して食べる習性があり、一方はやにえは、一時に多くの食物が得られたときに数多く立てられる傾向がある。このことからすると、突き刺してはみたが食べ切れないで残ったものがはやにえであるという可能性もある。また、縄張り(テリトリー)の境界を示すものとしても利用されているという説がある。モズがはやにえを立てる習性は、日本では古くから知られ、「鵙(もず)の草久吉(くさぐき)」「百舌鳥(もず)の早贄」「伯労(もず)の磔刑(はりつけ)」などと古書や歌に登場している。[樋口広芳]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典内のはやにえの言及

【モズ(百舌∥鵙)】より

…大型昆虫類,カエル,トカゲのほかに,小鳥や小型のネズミ類までとり,獲物は脚でおさえるか,あるいはとがった枝に突きさしてから,くちばしで引き裂いて食べる。モズ類は,〈はやにえ〉をつくることでも有名である。はやにえは,春から秋にかけての食物の豊富な時期に,木のとげ,枝先などの鋭くとがったものに,とらえた獲物を突きさし,そのまま食べずに残されたもので,一部は冬の間に食べられることが知られている。…

※「はやにえ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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