改訂新版 世界大百科事典 「ハンブルクシステム」の意味・わかりやすい解説
ハンブルク・システム
Hamburger system
ドイツのハンブルク市で18世紀後半にはじめられた救貧組織。当時ハンブルク市はドイツ北西部の大商業都市であったが,多数の失業者・貧困者が存在していた。そこで市当局はこれらを救済するために市域を区分し,それぞれの地域に監督官を配置,貧困者の調査を行わせるとともに適正な救済を通じ自助を援助した。1852年ドイツのエルバーフェルト市は,この組織を修正発展させた救貧組織を採用した。このため両者を一括してハンブルク=エルバーフェルト制度とも呼ばれている。エルバーフェルト市の組織は,市域を1区内に4名以上の貧困者がいないよう546に区分し,ボランティアの委員を配置,貧困者の訪問調査および救済を担当させる一方,これらの地区を14の大区に組織し監督官に統轄させ,さらにこの上部に組織の最高部として市長,市会議員などにより構成される中央委員会を設置,施設外救助や施設内救助の監督,規程の作成などを行うものとされた。この制度の特徴としては,各委員の担当する貧困者をごく少数にかぎり,綿密な調査を通じ救済および更生の徹底を期したこと,救済を中央集権化し運営管理の均質化を図ろうとしたことなどが挙げられる。この制度はのちのイギリスのCOS(シーオーエス)(慈善組織協会)の思想と活動に影響を与え,また日本の方面委員制度(現在の民生委員制度の前身)の制定に際しなんらかの影響を与えているとされている。
執筆者:藤井 康
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報