改訂新版 世界大百科事典 「バベッジ」の意味・わかりやすい解説
バベッジ
Charles Babbage
生没年:1792-1871
イギリスの応用数学者。計算機械の発明者として知られる。富裕な家に生まれ,家庭で教育されたのち,ケンブリッジ大学に学んだ。1827年にケンブリッジ大学の教授になった。彼は数学教育の革新を唱え,研究を推進するためには学会が必要であると主張した。バベッジは,ローヤル・ソサエティの旧套(きゆうとう)ぶりを攻撃し,天文協会Astronomical Society,イギリス科学振興協会British Association for the Advancement of Science,ロンドン統計協会London Statistical Societyの設立に協力した。彼は文化と産業の両方にとって科学が不可欠であることを洞察し,国家は科学研究を援助すべきであると主張した。多才な彼は,暗号解読法,確率論,地球物理学,天文学,高度測量,検眼鏡検査法,統計言語学,気象学,保険統計,生産工学に関心があった。例えば生産工学については,ヨーロッパ中の工場を訪問調査して1832年に《機械と製造業の経済について》を著した。数表の不完全さに悩まされた彼は,計算機械を作って数表の誤りをなくそうとした。34年ころバベッジが作った〈差分機械difference engine〉は,自動印刷出力を備えていた。この機械は1から108000までの対数表を作成するのに使われた。差分機械が未完成のまま,彼は解析機械analytical engineの開発にとりかかった。ここではJ.M.ジャカールの自動織機にヒントを得て,パンチカードによってプログラムするようになっていた。解析機械は,バベッジの死後に息子H.P.バベッジによって小規模なものが作られた。バベッジの計算機械は,二進法ではなく十進法を採用しており,歯車を利用していて純粋なディジタル方式ではないが,今日のコンピューターの源流と考えられている。バベッジの機械は今日,ロンドンの科学博物館に保存されている。
執筆者:高橋 雄造
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報