日本大百科全書(ニッポニカ) 「バン・デル・メール」の意味・わかりやすい解説
バン・デル・メール
ばんでるめーる
Simon van der Meer
(1925―2011)
オランダの物理学者、技術者。ハーグに生まれる。第二次世界大戦でオランダはドイツに占領され、大学が閉鎖されたため、終戦後の1945年にデルフトの工科大学に入学した。1952年に卒業し、総合電機会社フィリップス社の研究所に勤務、高電圧装置や電子顕微鏡の開発に取り組んだ。1956年にスイスのジュネーブにあるヨーロッパ原子核研究機構(CERN(セルン))に移り、1990年に引退するまで同研究所において、さまざまなプロジェクトに参加した。ジュネーブ大学、アムステルダム大学から名誉博士号を贈られている。
電気専門のエンジニアであるが、理論物理学にも精通していた。1960年代前半にニュートリノビームを集束する装置「ニュートリノホーン」を発明した。さらに強力な加速器のISR(Intersecting Storage Rings、交差貯蔵リング)、SPS(Super Proton Synchrotron、超陽子シンクロトロン)の開発に参加したが、このときに陽子と反陽子を正面衝突させる手法、確率冷却の原理を発見している。のちにCERNにおいてルビアのグループがSPSを用いて、素粒子間に働く弱い相互作用を媒介するとされているW粒子とZ粒子を発見した。こうした研究の業績により、1984年にルビアとともにノーベル物理学賞を受賞した。
[編集部]