ヨーロッパ原子核研究機構European Organization for Nuclear Research(英語)/Organisation Européenne pour la Recherche Nucléaire(フランス語)の略称。欧州合同原子核研究所ともよばれる。スイスのジュネーブ郊外、フランスとの国境地帯に設置されている世界最大規模の素粒子物理学の研究所である。CERNとは、この機構の開設を準備した組織のフランス語名称Conseil Européen pour la Recherche Nucléaireの頭文字で、機構開設後も正式な略称として使われている。
1954年に設立され、ヨーロッパ諸国(22か国がメンバー)とイスラエルによる素粒子、高エネルギー物理、原子核物理、加速器科学の共同利用施設である。地下に全周27キロメートルに及ぶ円形加速器を有し、大型ハドロン衝突型加速器(LHC:Large Hadron Collider)を使い、世界最先端の素粒子物理の実験を行っている。CERNは非メンバー国からの研究者も受け入れており、また、WボソンとZボソンを発見したルビアなど多くのノーベル物理学賞受賞者を輩出している。2012年7月のヒッグス粒子の発見には、超巨大装置アトラスATLAS(A Toroidal LHC ApparatuS)を使った実験を行った日本の研究者グループも大きく貢献した。素粒子物理学研究以外でも、現在のインターネット環境の基礎になるさまざまな技術(HTML、HTTP、WWW)を開発したことでも知られる。なお、日本はオブザーバー国として参加している。
[山本将史 2022年3月23日]
ヨーロッパ合同原子核研究機構Centreeuropéen pour la recherche nucléaireの略称。物質を構成する基本粒子,すなわち素粒子とは何かを明らかにすることを目的として,ユネスコの勧告に基づいて,1954年スイスのジュネーブに設立された物理学研究所。この分野の実験的研究には巨大な粒子加速器が不可欠であるが,加速器の建設には莫大な費用がかかるので,アメリカとソ連以外の国は単独ではこの負担に耐えられない。そこで,西ヨーロッパ諸国は,フランス,西ドイツ,イギリスなどを中心に協力してCERNを設立したわけである。この意味でCERNはヨーロッパ共同体(EC)の科学上のシンボルとしての役割を担っているといえる。CERNでは,1959年に陽子を30GeVにまで加速できる陽子シンクロトロンが完成し,以来この加速器を用いた多くの実験が行われた。また82年には450GeVの陽子シンクロトロンも完成した。CERNにおける研究成果はアメリカやソ連(現,ロシア)のライバル研究所をしのぐと評価されているが,この陽子シンクロトロンが完成したことによって高エネルギー物理学のメッカとしてのCERNの地位はいっそう揺るぎないものになったといえる。
執筆者:成定 薫
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…科学の巨大化の傾向は,巨大な加速器を必要とする高エネルギー物理学などにもみることができる。大加速器の建設と維持には莫大な費用がかかるため,ヨーロッパ諸国は共同出資して,ジュネーブ近郊にCERN(セルン)(欧州合同原子核研究所)を設立した。ビッグ・サイエンスは,米ソを除いては,一国の手に余るものとなってしまったのである。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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