改訂新版 世界大百科事典 「パッシェンの法則」の意味・わかりやすい解説
パッシェンの法則 (パッシェンのほうそく)
Paschen's law
気体が絶縁破壊する電圧,すなわち火花電圧に関する法則。平等電界の場合次のように表現される。〈気体の火花電圧は気体の密度とギャップの長さの積で定まる〉。気体の密度は圧力に比例し絶対温度に反比例するので,温度一定の条件では火花電圧は圧力とギャップ長の積の関数として定まる。不平等電界では単にギャップの長さのみを変えると電界分布が変化するので次のように表現する。〈電極形状やギャップ長の大きさを一様にn倍し,気体密度を1/n倍しても火花電圧は変わらない〉。これを相似則と呼ぶ場合がある。パッシェンの法則により気体の火花電圧は温度,圧力が変わっても標準状態でギャップ長のみを変化して測定しておけば求められるので便利である。この法則は1889年にドイツの物理学者L.C.H.F.パッシェンにより見いだされた。現在ガス絶縁方式が普及して変電設備が小型化されたが,全体を1/nに縮小しても気体密度をn倍すれば同じ絶縁耐力が得られるというパッシェンの法則の応用と考えることもできる。
執筆者:河野 照哉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報