日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒェラン」の意味・わかりやすい解説
ヒェラン
ひぇらん
Alexander Lange Kielland
(1849―1906)
ノルウェーの小説家。キエラン、シェランとも。また、かつてはドイツ読みでキーラントともいった。1880年代に活躍した自然主義作家で、キルケゴール、ミル、ハイネなどの影響を強く受ける。ノルウェー有数の商港スタバンゲルの裕福な中産階級の出身であるが、彼の作品には自分の育った階級に対する強い批判の姿勢がうかがわれる。スタバンゲルの商業貴族と貧民との階級的コントラストを痛烈な皮肉で表現し、さらにロマンチックな自然描写を加えた『ガルマンとワーシュ』(1880)、『ワーシュ船長』(1882)などが代表作。そのほか、社会批判の三部作に『結婚』(1883)、『フォルトゥナ』(1884)、『夏至の夜』(1887)がある。91年にはスタバンゲル市長、1902年には州知事を歴任した。
[山口卓文]