日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒレウツボ」の意味・わかりやすい解説
ヒレウツボ
ひれうつぼ / 鰭鱓
slender moray
[学] Myroconger gracilis
硬骨魚綱ウナギ目ヒレウツボ科に属する海水魚。九州・パラオ海嶺(かいれい)から1個体のみ知られている。体は細長く、全体に比較的強く側扁(そくへん)する。肛門(こうもん)は体の中央よりもわずかに前方に開く。頭は小さく、全長のおよそ11%。吻(ふん)はやや鋭くとがり、縦扁(じゅうへん)する。上顎(じょうがく)前端は下顎前端と同位置。後鼻孔(こうびこう)は縁がやや隆起し、目の背縁前方に接近して開く。口は比較的大きく、上顎の後端は目の後縁下を越える。両唇はない。鰓孔(さいこう)は三日月形で、ほとんど垂直に開く。上下両顎の歯は大きくて鋭く、3列に並び、外列歯は小さく、中央歯はやや大きく、内列歯はもっとも大きい。上顎の前端部の歯はすべての歯の中でもっとも大きい。鋤骨歯(じょこつし)(頭蓋(とうがい)床の最前端の骨にある歯)は細長い歯帯を形成し、前部で3列、後部で1列になる。側線孔は全体に不明瞭(ふめいりょう)であるが、背びれ始部から胸びれ後縁の眼径大ほど後方の間には7個の孔(あな)が開き、およそ等間隔に並ぶ。背びれは胸びれの基底上方よりいくぶん前から始まり、全体に同じ高さである。臀(しり)びれの高さは背びれより低く、両ひれは尾端で尾びれとつながる。胸びれは円く広がり、眼径より長い。標本個体の体は淡褐色で、頭部の腹面と腹部はそれより淡い。全長48センチメートルあまりに達する。水深320~640メートルから底引網で漁獲された。
[尼岡邦夫 2019年11月20日]