自発磁化をもつ磁性体を強磁性体という.金属の鉄,コバルト,ニッケルなどはよく知られた強磁性体である.強磁性体が示す磁性を強磁性といい,反強磁性,常磁性,反磁性などと区別される.普通の強磁性体では自発磁化は温度の上昇とともに減少し,ある温度で完全に消失する.この温度をキュリー温度という.キュリー温度以上では,強磁性体は常磁性を示す.強磁性体は通常は非常に多くの磁区に分かれている.強磁性体に加えた外部磁場を強くしていき,次に減少させると,磁区の変化に原因する磁気ヒステリシスを示す.強磁性体が自発磁化をもつのは,強磁性体を構成している磁気的原子あるいはイオンの間に交換相互作用がはたらいて,それらのスピン,したがって磁気モーメントを平行にそろえるためである.一方,熱運動はそれを妨げるので,温度の上昇とともに,磁気モーメントの平行性は乱れ,キュリー温度以上では自発磁化が消えてしまう.強磁性体のキュリー温度以上の磁化率は,キュリー-ワイスの法則に従う.フェリ磁性や寄生強磁性は自発磁化をもつために,広い意味の強磁性に含まれる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…さらに電子のスピン(電子の自転運動)がもつ磁気モーメントが磁性の担い手である場合が多い。この電子のスピンの向き(自転運動の軸)がそろうと,磁気モーメントの向きがそろい,強磁性が発現することになる。そのためには,スピンの向きをそろえるような力が二つのスピンの間に働かねばならない。…
…これらの運動が電子の磁気モーメントを形成し,この磁気モーメント,とくにスピンに基づくものが物質の磁気的性質を担っている。強磁性の場合,この微視的な電子の磁気モーメントの向きがそろい,巨視的な磁石の磁気モーメントとして現れる。電子の磁気モーメントに比較するとその大きさは1000分の1程度であるが,原子核もそれを構成する核子に由来する磁気モーメント(核磁気モーメント)をもっている。…
…磁石に近づけたとき,物質が示す性質はその例である。このとき著しい性質を示すのは強磁性と呼ばれる磁性を有する物質(強磁性体)で,自身も磁極をもち,磁石となって互いに力を及ぼす。強磁性のような著しい効果は示さないが,磁石が及ぼす力(磁場)の方向に対して逆の方向に弱い磁化を生ずる性質を反磁性,磁場の方向に平行な磁化を生ずる性質を常磁性といい,そのような磁性をもつ物質をそれぞれ反磁性体,常磁性体と呼ぶ。…
※「強磁性」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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