硝酸鉛(読み)しょうさんなまり(その他表記)lead nitrate

日本大百科全書(ニッポニカ) 「硝酸鉛」の意味・わかりやすい解説

硝酸鉛
しょうさんなまり
lead nitrate

鉛の硝酸塩酸化鉛(Ⅱ)PbOや鉛白Pb(OH)2・2PbCO3または金属鉛硝酸に溶かして得られる。無色結晶。470℃以上で酸化鉛(Ⅱ)と二酸化窒素とに分解する。濃硝酸には溶けにくい。水に溶ける。水酸化アルカリにより水酸化鉛(Ⅱ)を沈殿するが、過剰に溶けて亜鉛(あなまり)酸塩となる。顔料製造原料、マッチ爆薬防腐剤収斂(しゅうれん)剤、染色試薬などの用途がある。

[守永健一・中原勝儼]


硝酸鉛(データノート)
しょうさんなまりでーたのーと

硝酸鉛(Ⅱ)
  Pb(NO3)2
 式量  331.2
 融点  306.8℃
 沸点  ―
 比重  4.53(測定温度20℃)
 結晶系 立方,単斜
 屈折率 (n) 1.7815
 溶解度 56.5g/100g(水20℃)

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「硝酸鉛」の意味・わかりやすい解説

硝酸鉛 (しょうさんなまり)
lead nitrate

一般に硝酸鉛(Ⅱ),化学式Pb(NO32を指す。Pb(NO34は不安定で単離されていない。鉛,酸化鉛(Ⅱ),炭酸水酸化鉛(Ⅱ)(鉛白)を硝酸に溶解し,溶液を蒸発して乾固すると無色の立方晶系または単斜晶系に属する結晶として得られる。比重4.53(20℃)。加熱すると470℃で分解して酸化鉛(Ⅱ)になる。水には比較的よく溶け(100gの水に20℃で56.5g,100℃で135g),水溶液は弱酸性を示す。液体アンモニア,ヒドラジンなどにもよく溶ける。溶液は導電性があり,これらの溶媒中でもイオンが生成していることを示している。濃硝酸には難溶。
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化学辞典 第2版 「硝酸鉛」の解説

硝酸鉛(Ⅱ)
ショウサンナマリ
lead(Ⅱ) nitrate

Pb(NO3)2(331.21).酸化鉛(Ⅱ)を硝酸に溶かしてから溶液を乾固するか,金属鉛を濃硝酸と反応させると得られる.無色の等軸結晶系または単斜晶系結晶.格子定数a = 0.784 nm.密度4.53 g cm-3.470 ℃ で分解して酸化鉛(Ⅱ)を生じる.水に易溶.液体アンモニア,アルカリ,ヒドラジンなどによく溶ける.鉛化合物の合成原料,めっき,媒染剤,ペイント,顔料,写真感光剤,皮なめし,爆薬,マッチなどに用いられる.有毒.[CAS 10099-74-8]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「硝酸鉛」の意味・わかりやすい解説

硝酸鉛
しょうさんなまり
lead nitrate

化学式 Pb(NO3)2 。無色結晶。熱すると 470℃で分解する。有毒。水,アルコールに可溶,濃硝酸に不溶。マッチ,爆薬の製造,染色の媒染剤,染料工業での酸化剤などとして使用される。

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