ビーバーブルック(その他表記)William Maxwell Aitken Beaverbrook

改訂新版 世界大百科事典 「ビーバーブルック」の意味・わかりやすい解説

ビーバーブルック
William Maxwell Aitken Beaverbrook
生没年:1879-1964

カナダ生れのイギリスの保守政治家,新聞経営者。投機師として〈金融の手品師〉とよばれるほどの才能を発揮して資産を成す。1910年イギリスに渡って下院議員となり,同じカナダ生れのA.B.ローの私設秘書として政界進出を果たす。保守党議員として活動するかたわら,《デーリー・エクスプレス》(1916),《イブニング・スタンダード》(1923)を買収,また《サンデー・エクスプレス》(1921)を創刊するなど新聞経営に手を染める。とくに30~40年代の有力な大衆紙であり,自分の新聞でもある《デーリー・エクスプレス》を政治的武器に使い,議会の内外で大英帝国の紐帯強化の実現をめざした。その意味でビーバーブルックは,大衆紙の部数=政治的〈力〉だというノースクリッフの後継者といえる。第2次大戦中,チャーチル内閣の航空機生産相,兵站相を務めた。なお最近保守政治家としてだけではなく,歴史家ビーバーブルックの評価の動きが,彼の同時代についての著作(《政治家と戦争》(1928-32)ほか)の検討を通して出てきている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ビーバーブルック」の意味・わかりやすい解説

ビーバーブルック
びーばーぶるっく
1st Baron Beaverbrook
(1879―1964)

イギリスの新聞人、政治家。本名はWilliam Maxwell Aitken。カナダ、オンタリオ州牧師の家に生まれる。大学入試に失敗して証券取引業者となり、百万長者といわれるようになった。1910年イギリスに渡って下院議員に当選、そのころから『デーリー・エクスプレス』紙の経営に関係、のちにその所有者となり、日曜紙、夕刊紙をも経営した。1917年男爵に叙せられた。第二次世界大戦中は航空機生産相なども務めたが、新聞は宣伝のために発行しているのだと公言したことで有名。英連邦主義を唱える一方、第一次世界大戦中から政界の実力者と親しく交わり、のちにその内幕を『政治家と戦争』(1928~1932)に書いたほか、カナダのニュー・ブランズウィック大学学長を務めるなど、広く国際的にもさまざまな分野で活動した。

[伊藤慎一]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ビーバーブルック」の意味・わかりやすい解説

ビーバーブルック
Beaverbrook, William Maxwell Aitken, 1st Baron

[生]1879.5.25. オンタリオ,メープル
[没]1964.6.9. サリー
カナダ生れのイギリスの政治家,新聞経営者。モントリオール証券取引所時代にセメント株で当て資産をなす。 1910年イギリスに渡って政治生活に入った。 17年男爵に叙せられ,ビーバーブルック卿と称した。第1次世界大戦後『デーリー・エクスプレス』の経営に成功,これを武器にして議会内外で大英帝国の紐帯強化の実現をはかった。 21年『サンデー・エクスプレス』を創刊,さらに『イブニング・スタンダード』を買収するなど,新聞経営者として活躍したほか,第2次世界大戦中はチャーチル内閣の航空生産相,軍需相として功績をあげた。主著"Politicians and the Press" (1925) ,"Resources of the British Empire" (34) 。

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