フォーサイト家物語(読み)ふぉーさいとけものがたり(英語表記)The Forsyte Saga

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フォーサイト家物語」の意味・わかりやすい解説

フォーサイト家物語
ふぉーさいとけものがたり
The Forsyte Saga

イギリスの作家ゴールズワージーの長編連作小説。1922年刊。『資産家』(1906)、『窮地』(1920)、『貸家』(1921)の三長編と、『小春日和(こはるびより)』(1918)、『目覚め』(1920)の二短編からなる。ビクトリア朝時代の典型的ブルジョアフォーサイト一族の物語を、1886年から第一次世界大戦直後の時代までたどっている。

 第一部『資産家』では、物欲本能の権化(ごんげ)のようなソームズ・フォーサイトと、彼の物質主義に反逆して自由を求める美貌(びぼう)の妻アイリーニ、芸術家肌の建築家ボシニーとの三角関係を、第二部『窮地』では、ソームズ、アイリーニと、従兄弟(いとこ)の画家ジョリオンとの葛藤(かっとう)が描かれる。第三部『貸家』では、物語は次の世代に移り、ソームズと後妻の間にできた娘と、ジョリオンとアイリーニの間にできた息子との恋愛が中心になる。作者の意図は、フォーサイト家の人々の物質主義と功利主義を、自由な人間的感情や美と愛に対する情熱と対立させて、批判、風刺することにあった。19世紀後半から20世紀初頭にかけての社会史の断面をうかがわせて興味深い。

[小松原茂雄]

『臼田昭・石田英二・井上宗次訳『フォーサイト家物語』全3冊(角川文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

お手玉

世界各地で古くから行われている遊戯の一つ。日本では,小豆,米,じゅず玉などを小袋に詰め,5~7個の袋を組として,これらを連続して空中に投げ上げ,落さないように両手または片手で取りさばき,投げ玉の数や継...

お手玉の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android