日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゴールズワージー」の意味・わかりやすい解説
ゴールズワージー
ごーるずわーじー
John Galsworthy
(1867―1933)
イギリスの小説家、劇作家。富裕な弁護士の子としてロンドン郊外に生まれ、ハロー校からオックスフォード大学に進み、弁護士の資格をとるが、転じて文筆生活に入る。小説『資産家』(1906)で注目を浴び、その連作『窮地』(1920)、『貸家』(1921)を発表、『フォーサイト家物語』を書き上げる。この続編として、『白猿』(1924)、『銀の匙(さじ)』(1926)、『白鳥の歌』(1928)よりなる『近代喜劇』を完成。これらに、長編三部作『終章』(1934、没後刊)を加え、『フォーサイト家年代記』と総称される。
これは、19世紀後半から20世紀前半のイギリス社会を背景に、典型的ブルジョア階級の一家、フォーサイト家の人々を中心とする大河小説で、作者の意図は、新興ブルジョア階級の精神の批判にあったが、その態度はかならずしも一貫してはいない。バージニア・ウルフによって、ベネット、ウェルズらとともに「物質主義者」のレッテルを貼(は)られ批判を浴びたが、彼の作品は正統的リアリズムの手法で、前後50年間にわたるイギリス社会変貌(へんぼう)の過程をみごとに定着させている。
劇作では『銀の箱』(1906)、『争議』(1909)、『公正』(1910)など、いわゆる「問題劇」の秀作が多い。1932年ノーベル文学賞受賞。
[小松原茂雄]