改訂新版 世界大百科事典 「フクロヤマネ」の意味・わかりやすい解説
フクロヤマネ (袋山鼠)
eastern pygmy possum
Cercartetus nanus
有袋目ブーラミス科の哺乳類。姿,習性ともに齧歯(げつし)類のヤマネ,とくにヨーロッパヤマネに似ている。体は丸く,四肢が短い。尾は,ヤマネのそれと異なり基部を除いて裸出し,ものに巻きつけることができる。秋に,冬眠のための脂肪を体に蓄積して著しく肥大するが,この際に尾にも脂肪を蓄えるため,目だって太くなる。耳と目は大きい。体色は黄褐色,目の周囲が黒色。よく発達した育児囊には4個の乳頭がある。体長8.5~10cm,尾長9~11cm,体重15~25g。オーストラリアとタスマニアの森林にすみ,夜間活動する。巣は木の洞や茂みの枝の間に,樹皮と葉を編んでつくられ,数頭がともに過ごす。食物は昆虫,クモ類,果実,花,花粉,花みつなど。繁殖は年に1回行われ,産子数は乳頭数よりも多いといわれるが,詳しいことはわかっていない。寿命は4~6年。ヒメフクロヤマネC.concinnusなどよく似た近縁種が他に3種ある。
→有袋類
執筆者:今泉 吉晴
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報