フタスジイシモチ(読み)ふたすじいしもち(その他表記)Fukui cardinalfish

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フタスジイシモチ」の意味・わかりやすい解説

フタスジイシモチ
ふたすじいしもち / 二筋石持
Fukui cardinalfish
[学] Ostorhinchus fukuii

硬骨魚綱スズキ目テンジクダイ科コミナトテンジクダイ亜科スジイシモチ族に属する海水魚。八丈島、小笠原(おがさわら)諸島、相模湾(さがみわん)、静岡県大瀬崎(おせざき)、和歌山県紀伊長島(きいながしま)、高知県柏島(かしわじま)、鹿児島県硫黄島(いおうじま)、沖縄県などの太平洋沿岸、大スンダ列島、オーストラリア北西岸、南アフリカ沿岸など西太平洋とインド洋に広く分布する。体は中庸の長楕円(ちょうだえん)形で側扁(そくへん)する。体長は体高の2.8~3.1倍、体高はおよそ頭長に等しい。目は非常に大きく、眼径はおよそ吻長(ふんちょう)の2倍。上顎(じょうがく)の後端は目の中央下に達する。上主上顎骨はない。下顎犬歯は発達しない。前鰓蓋骨(ぜんさいがいこつ)の隆起線には鋸歯(きょし)がないが、縁辺には鋸歯がある。頭部と体の鱗(うろこ)は櫛鱗(しつりん)で、有孔側線鱗数は28枚。鰓耙(さいは)は上枝に2本、下枝に11本。尾びれの後縁はわずかにくぼむ。胃と腸は黒みを帯びる。背びれは胸びれ基底上方から始まり、2基でよく離れ、第1背びれは7棘(きょく)、第2背びれは1棘9軟条。臀(しり)びれは第2背びれ起部下方から始まり、第2背びれとおよそ同形で、2棘8軟条。胸びれは14軟条。体色はすこし透明がかった淡橙(たんとう)色で、体側に2本の黒色の縦帯がある。上の帯は目の上縁から第2背びれの後端をすこし越えて尾柄(びへい)に達する。下の帯は吻端から目を横切り、尾柄後端付近に達する。尾柄の後端におよそ眼径大の黒斑(こくはん)がある。すべてのひれは濃桃色。水深20~100メートルの岩礁サンゴ礁の周辺の砂泥底にすみ、比較的深所を好む。釣りや刺網(さしあみ)でとれる。雌雄が対(つい)で求愛行動と産卵をして、雄が卵を口内保育する。最大体長9.3センチメートルほどに達する。

 本種はスジイシモチ属に属する。2014年(平成26)に、魚類学者の馬渕浩司(まぶちこうじ)(1971― )らはDNAの分析結果に加えて、前鰓蓋骨の腹縁が骨質であることなどの形態的特徴により、本種を長く慣習的に使用されてきたコミナトテンジクダイ属(旧、テンジクダイ属)Apogonからスジイシモチ属へ移動した。

[尼岡邦夫 2023年4月20日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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