遷移元素(読み)せんいげんそ(英語表記)transition element

  • transition elements
  • 遷移元素 transition elements

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

不完全なdまたはf殻をもつ陽イオンを生じる元素群。この元素群には,スカンジウムから銅まで,イットリウムから銀まで,ランタンから金まで,アクチニウムから 111番元素までの4系列がある。ランタンから金までの系列のなかのセリウムからルテチウムまでは,特にランタニド元素 (希土類元素) といわれ,またアクチニウムから 111番元素のなかのトリウムからローレンシウムまではアクチニド元素といわれる。これらはいずれも不完全f殻をもち,f殻が順次満たされていく系列を構成するので,特に内遷移元素ということがある。ランタンとアクチニウムを内遷移元素に入れることもある。遷移元素はすべて金属元素で,単体は硬く,強靭で,融点,沸点が高く,多くは常磁性を示し,合金をつくりやすい。また錯体を形成しやすく,ほとんどが有色である。

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百科事典マイペディアの解説

長周期型周期表中,一つの周期で左側の典型元素から右側の典型元素へ移る途中の位置にある元素。すべて金属元素で,遷移金属とも。原子番号が増えてゆくあいだ,類似した元素のまま少しずつ性質が推移してゆく。これは,原子の電子構造からいってd電子またはf電子がつまっていく過程にあるためと考えられる。普通,21番のSc〜30番のZn,39番のY〜48番のCd,57番のLa〜80番のHg,89番のAc〜103番のLrまでの元素すべてをいう。ただし,Zn,Cd,Hgを除くこともある。初めメンデレーエフが周期表を作ったときに第VIII族としてとりあげたよく似たFe・Co・Ni,Ru・Rh・Pd,Os・Ir・Ptの3組が,きわめて陰性なハロゲンを含む第VII族から,きわめて陽性なアルカリ金属を含む第I族への過渡的な元素であるとして初めて命名したもの。
→関連項目格子欠陥常磁性超硬合金典型元素

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栄養・生化学辞典の解説

 遷移金属ともいう.不完全なdまたはf亜殻をもつ元素と定義される.原子番号21のスカンジウムから29の銅まで,39のイットリウムから47の銀まで,72のハフニウムから79の金まで,などが遷移元素.

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世界大百科事典 第2版の解説

長周期型周期表の第IIIA族から第IIB族にわたる元素の総称。すべて金属元素であるから,遷移金属とも呼ぶ。これらのうち,第4周期のスカンジウムScから銅Cuまで,第5周期のイットリウムYから銀Agまでの各9個の元素を,それぞれ第一遷移元素,第二遷移元素(あるいは第一遷移系列,第二遷移系列)と呼び,第6周期のランタノイドおよびそれに続くハフニウムHfから金Auまでの計23個の元素を第三遷移元素(第三遷移系列)と呼ぶ。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

原子の電子配置で、最外部のd殻あるいはf殻が不飽和であるか、不飽和なイオンをつくるような元素の総称。転移元素ともいう。典型元素に対する語。遷移元素のうちランタノイド(原子番号58~71)およびアクチノイド(同90~103)に属する元素は、最外部の不完全d殻あるいは内部の不完全f殻をもつ元素で、これを内部遷移元素とよんで区別することもある。またd殻が完全に詰まった電子配置しかとらない元素であるが、原子番号30の亜鉛、48のカドミウム、80の水銀は、それぞれの前にある系列の元素との類似性から遷移元素に含めることもある。

 ロシアのメンデレーエフが初め周期表をつくったときは、短周期型で第Ⅷ族として性質のよく似た鉄をはじめとする3元素ずつ3組の元素を別に分類し、これらはきわめて陰性なハロゲンを含む第Ⅶ族から、きわめて陽性なアルカリ金属を含む第Ⅰ族への過渡的な元素という意味で、遷移元素とよんだ。しかしその後、遷移元素の化学的性質の特徴や、それが電子構造に由来することから、現在のように拡張して分類されることになった。

 遷移元素はいずれも金属なので、遷移金属ともよばれる。その多くは多種類の安定な原子価を有し、化合物が着色しているものが多く、常磁性であるものが多い。

[中原勝儼]

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精選版 日本国語大辞典の解説

〘名〙 周期表上の元素の分類名の一つ。今日では長周期型周期表の3~11族に属する元素をさす。典型元素に対する語。

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化学辞典 第2版の解説

IUPACの定義によれば,不完全に満たされたd亜殻をもつ元素,またはそのようなd亜殻をもつ陽イオンを生じる元素.長周期表の3族から11族元素.厳密には21番元素のスカンジウムScから29番の銅Cu(第一遷移系列),39番のイットリウムYから47番の銀Ag(第二遷移系列),57番のランタンLa,72番のハフニウムHfから79番の金Au(第三遷移系列),89番アクチニウムAc,103番のローレンシウムLrから111番のレントゲニウムRg(第四遷移系列)をいう.性質の類似から12族の亜鉛,カドミウム,水銀,(112番コペルニシウム)を加えることもある.f亜殻が不完全な57番ランタンLaから71番ルテチウムLu(ランタノイド),および89番のアクチニウムAcから103番のローレンシウムLr(アクチノイド)を内部遷移元素(inner transition elements)という.IUPACの無機化合物命名法(1990年)はランタノイド,アクチノイドも遷移元素に含まれるとしている.遷移元素という名称の起こりは,D.I. Mendeleev(メンデレーエフ)が周期表によって元素を分類したとき,陰性の強いハロゲン(Ⅶ族)と陽性の強いアルカリ金属(Ⅰ族)との間に,鉄族および白金族元素が第Ⅷ族元素として過渡的に介在していたことにちなんでいる.遷移元素の単体はいずれも重金属で,遷移金属ともよばれる.同一系列(同一周期)に属する元素のイオン化エネルギー,原子半径などの変化は,典型元素に比べて緩やかで,互いの性質が似通っている.この傾向は内部遷移元素でいちじるしく,したがって相互分離が困難であった.鉄,銅をはじめ,ニッケル,クロム,チタン,モリブデン,タングステンなど金属材料として重要なものが多く,相互に合金をつくることによって多様な物性を発揮する.遷移元素の化合物は不完全な電子殻をもっているため,常磁性を示すものが多い.また,錯体を形成しやすく,有色のものが多い.遷移元素は同一元素が種々の酸化状態をとるため,酸化剤,還元剤として重要なものも少なくない(KMnO4,K2Cr2O7,FeSO4,TiCl3など).また,酸化数の高いものは酸性,低いものは塩基性を示し,中間の酸化状態のものは両性を示す傾向がみられる.

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