フトミミズ

改訂新版 世界大百科事典 「フトミミズ」の意味・わかりやすい解説

フトミミズ (太蚯蚓)

貧毛綱フトミミズ科Megascolecidaeに属する環形動物の総称。陸産で,畑や堆肥の中や林の落葉の下などにすむ。体の大きさは中型から大型のものが多く,ニューギニアからオーストラリアにかけての地域が起源といわれている。環帯は第15体節,またはそれより前方の体節から始まり,雄性孔は第17~19体節に1対,雌性孔は第14体節の腹側正中線に1個存在する。受精囊は第10体節よりも前方に1~5対あり,体側面で体節間溝に開いている。

 最近の日本産フトミミズ科の研究(イーストンE.G.Easton,1981)によって,それまでの9属が5属に統一され,雄生殖孔の形態からPheretima属のかなりの種類Amynthas属に移された。また現在までに報告されていた150種ほどの種類がイーストンによって整理されて36種と大幅に減り,日本固有種も減少して20種ほどになった。この科の1種Megascolides australisはオーストラリア南西部にみられ,自然状態でよくのびると2.1mにもなる。解熱剤の〈地竜〉はほとんどがフトミミズ科の種類を乾燥したものである。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フトミミズ」の意味・わかりやすい解説

フトミミズ
ふとみみず / 太蚯蚓

環形動物門貧毛綱フトミミズ科のミミズの総称であるが、狭義にはフトミミズ属のミミズの総称。

 フトミミズ科Megascolecidaeにはアカントドリルス亜科Acanthodrilinae(ホタルミミズなど)、オクネロドリルス亜科Ocnerodrilinae(オクネロドリルス・オキデンタリスとよばれる種が日本にいる)、オクトケータス亜科Octo chatinae(フタツイミミズの仲間である)、それに多数のフトミミズが属するフトミミズ亜科Megascolecinaeなどのグループが含まれる。日本産で学名のついているものだけで約80種ある。

 フトミミズ属Pheretimaにはフツウミミズヒトツモンミミズ、クソミミズなどが含まれ、学名をもつものだけで約70種があり、未記載の種を加えると200種を超える。最近、イギリスのイーストンは日本のフトミミズ類をアミンサス属Amynthas、メタフィレ属Metaphire、フェレチマ属Pheretima、ピゼメラ属Pithemera、ポリフェレチマ属Polypheretimaの5属に分割した。しかし、種の同定に誤りが多く、この扱いをそのまま認めることはできない。

大野正男

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フトミミズ」の意味・わかりやすい解説

フトミミズ
Megascolecidae

環形動物門貧毛綱後生殖門目フトミミズ科に属する種類の総称。一般に大型あるいは巨大な陸生のミミズ類を含む。アジア,オーストラリアがその分布の主要地域で,日本にも多くの種が生息している。なかでも Pheretima属には最も多くの種が含まれ,フツウミミズ (体長 25cm) をはじめとして日本に約 150種がすんでいる。このほか,南アメリカ原産で発光するヒカリミミズ Microscolex phosphoreus,体長 1.2~2mにもなるオーストラリアの Megascolides australis本科に含まれる。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

関連語をあわせて調べる

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android