イーストン(読み)いーすとん(その他表記)David Easton

日本大百科全書(ニッポニカ) 「イーストン」の意味・わかりやすい解説

イーストン
いーすとん
David Easton
(1917―2014)

アメリカ政治学者。カナダ生まれ。トロント大学卒業。1943年渡米。1947年ハーバード大学博士号を取得。同年シカゴ大学教授、1953年準教授、1955年教授となった。1968~1969年アメリカ政治学会会長、1979~1982年アメリカ学士院の研究・計画委員長を務めた。政治分析の一般的枠組み政治体系として示し、入力―転換変換)―出力フィードバック過程を説明した。また、「政治学における新しい革命」の論題で、政治学者の実践的関心を促した。主著には名著『政治体系The political system(1953)のほか、『政治分析の基礎』A framework for political analysis(1965)、『政治生活の体系分析』A systems analysis of political life(1965)、『現代政治理論の構想Varieties of political theory(1966)、『政治構造の分析』The analysis of political structure(1990)などがある。

[小林丈児・藤本 博 2018年6月19日]

『岡村忠夫訳『政治分析の基礎』(1968・みすず書房)』『大森弥他訳『現代政治理論の構想』(1971・勁草書房)』『山川雄巳訳『政治体系――政治学の状態への探求』第2版(1976・ぺりかん社)』『片岡寛光監訳『政治生活の体系分析』上下(1980/新装版・2002・早稲田大学出版部)』『山川雄巳監訳『政治構造の分析』(1998・ミネルヴァ書房)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「イーストン」の意味・わかりやすい解説

イーストン
David Easton
生没年:1917-

アメリカで活躍するカナダ人政治学者。トロント大学に学び,ハーバード大学で学位を取得。1955年以降シカゴ大学,クイーンズ大学教授。20世紀のアメリカ政治学を批判して,特定の政治文化に盲目的に拘束されない一般理論としての政治体系分析を提唱した。それは政治を一つの体系=システムと考え,政治体系とその外にあるさまざまな環境との相互作用を理解しようとするものである。この理論的枠組みにそって,青少年期における政治態度の形成過程,つまり政治的社会化の実証的研究も行っている。主著には,《政治体系》(1953),《政治分析の基礎》《政治生活の体系分析》(ともに1965)などがある。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イーストン」の意味・わかりやすい解説

イーストン
Easton

アメリカ合衆国,ペンシルバニア州東部の都市。デラウェア川とリーハイ川の合流点にのぞみ,フィラデルフィアの北方約 90kmに位置する。町の起源は 1752年。デラウェア川対岸のフィリップスバーグ (ニュージャージー州) とは鉄橋と自動車橋で結ばれている。周辺に豊富な石灰岩,鉄鉱石,蛇紋岩,木材の産出があり,農園も数多く,約 80km離れたところに無煙炭と亜鉛の産地をもつという有利な立地条件に恵まれる。バルブ,セメント,農業機械,製粉,飼料,産業用車両と鉱山用トレーラ,鋳物などの工業が立地し,また印刷,出版も行われている。人口2万 6276 (1990) 。

イーストン
Easton, David

[生]1917.6.24. トロント
カナダ生れのアメリカの政治学者。 1943年アメリカに渡り,47年ハーバード大学で博士号を得る。シカゴ大学,カリフォルニア大学 (アーバイン) 教授,アメリカ政治学会会長をも歴任。政治学へのシステム論の導入で有名。主著『政治体系』 The Political System (1953) ,『政治生活の体系分析』A System Analysis of Political Life (65) 。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のイーストンの言及

【政治】より

…このような政治観が,市民国家の階級的役割を粉飾するのに役立っているとしたK.マルクスは,政治すなわち成員全体を拘束する統一的な決定は,権力を握る支配階級の利益のために形成され維持されると論じた。政治を,かぎられた社会的価値の権威的な配分過程と定義する現代のD.イーストンや,政治は社会的価値を争奪してエリートが上昇していく過程だとするH.D.ラスウェルらは,階級社会観を前提としていないものの政治の役割を限定的に考える点で,市民社会以来の伝統を継いでいる。 しかし,20世紀の福祉国家の時代を背景にして,政治にもっと積極的な機能を認める考え方がますます有力になっている。…

【政治体系】より

…政治体系は,社会全体を一つのトータル・システムとみれば,経済や文化等と並ぶ一つのサブ(下位)システムであり,特有の構造と機能をもっているとされる。システム論を最初に政治学に導入したのはアメリカの政治学者D.イーストンである。以降,アーモンドGabriel A.AlmondやドイッチュKarl W.Deutsch等によって発展,精緻化され,現代政治理論における有力なモデルの一つとなっている。…

※「イーストン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

仕事納

〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...

仕事納の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android