ヒトツモンミミズ(その他表記)Pheretima hilgendorfi

改訂新版 世界大百科事典 「ヒトツモンミミズ」の意味・わかりやすい解説

ヒトツモンミミズ
Pheretima hilgendorfi

貧毛綱フトミミズ科の環形動物。学名hilgendorfiはこのミミズを最初に函館で採集したドイツ人の御雇教師F.M.ヒルゲンドルフにちなむ。和名は体前方の腹面に紋形があることによる。日本各地に分布し,畑や草地にすむ。

 体長8~20cm,体幅5~9mm,体節数90~120。体の背面赤褐色で,腹面は黄灰色,第8体節の腹面に名のようにふつう1個の円形斑紋があるが,なかには2個(第8,9体節)や3個(第8,9,10体節)もっている個体もある。斑紋は微細な乳頭がたくさん集まって形成されている。成熟すると第14~16体節が太くなり,色も変わって環帯がつくられる。環帯上の第14体節の腹側に産卵孔があり,第18体節の左右両側の円錐形の隆起上に雄性孔が開く。晩秋になると産卵孔から卵を産みだし,これが環帯から分泌された膜に包まれて第8~9体節の受精囊孔を通過する際に精子が加えられて受精する。直径3~4mmくらいの球形ないしレモン形の卵包が土の中に産みだされ,翌年早春に卵包から小さなミミズ(体長13~32mm)になって孵化(ふか)する。親は産卵後に死ぬ。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヒトツモンミミズ」の意味・わかりやすい解説

ヒトツモンミミズ
Pheretima hilgendorfi

環形動物門貧毛綱後生殖門目フトミミズ科。体長8~20cm,体幅 0.5~0.9cm,体節数 90~120。体の背面は赤褐色,腹面は帯黄灰色。第8体節の腹側に1個の丸い紋形があるところからその名がつけられたが,紋形が2あるいは3個ある個体も少くない。紋形は多数の微細な乳頭から構成されている。成熟すると第 14~16体節が太くなって環帯をつくり,第 14体節の腹面中央に雌性孔が開く。雄性孔は第 18体節の腹面左右の小さい円錐形の隆起上に開く。産卵期は晩秋で,この時期に産み出された卵は卵包内で育ち,翌年の早春に体長 1.5~3.2cmの小さなミミズになって卵包から出てくる。親は産卵するとすべて死ぬので一年生である。再生力が強く,体のまんなかで切られても,前片は後端部を再生してほぼ完全な体をつくる。ただし後片は,前端部がわずかに再生されるが,頭部ができないため死んでしまう。日本各地の畑,草地にすむ。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒトツモンミミズ」の意味・わかりやすい解説

ヒトツモンミミズ
ひとつもんみみず / 一紋蚯蚓
[学] Amynthas hilgendorfi

環形動物門貧毛綱フトミミズ科Megascolecidaeに属する陸生動物。北海道以南の日本各地と朝鮮半島に分布。ごみの中、落ち葉の下、草地の土中などいろいろな環境をすみかとし、日本のフトミミズのなかでもっとも普通にみられる種類の一つ。体の大きさは変化に富むが100~200ミリメートル、伸びると250ミリメートルを超える個体もまれではない。一紋の名は第8体節腹面にある円形の紋に由来する。紋は第9節や環帯の後方第18節にみられることもある。似た紋はユノシマミミズにもあり、その紋から精子が発見されている。正常な雄生殖器官の発達が悪いヒトツモンミミズやユノシマミミズでは、このような紋が生殖に関係するとも考えられる。

大野正男

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