改訂新版 世界大百科事典 「フラクトグラフィー」の意味・わかりやすい解説
フラクトグラフィー
fractography
材料の破断面を調査することにより,破壊原因あるいは破壊機構に関する情報を得る手法で,破面解析ともいう。材料破断面には破壊の過程が記録されている。これらの肉眼,ルーペ,金属顕微鏡による巨視的解析をマクロフラクトグラフィーmacrofractography,電子顕微鏡による微視的解析をマイクロフラクトグラフィーmicrofractographyと呼ぶ。後者はとくに材料内部の破壊の過程を直接観察し解析できるのが特徴である。最近の走査電子顕微鏡の普及はフラクトグラフィーを急速に発展させた。延性破壊ではディンプルdimpleと呼ばれる多数の小さなくぼみ状の模様が見られる。ディンプル破面のなかにも円形のもの,伸ばされたものなどが存在し,破壊に寄与した応力状態がディンプルの形状,向きによって判別できる。また,脆性破壊(ぜいせいはかい)では,へき開面での分離による河川状の模様が残され,リバーパターンriver patternと呼ばれている。これは,川の流れと同様にいくつかの支流が合流する方向に亀裂が伝播したことを物語る。疲労破壊面上では,ストライエーションstriationと呼ばれる応力周期と一致した規則正しい縞模様が観察され,亀裂の進展方向,伝播速度などがわかる。これらは代表例にすぎないが,そのほかさまざまな破壊形態がフラクトグラフィーにより解析されている。
執筆者:岸 輝雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報