フランケンシュタイン(読み)ふらんけんしゅたいん(英語表記)Georg von und zu Franckenstein

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フランケンシュタイン」の意味・わかりやすい解説

フランケンシュタイン(シェリー夫人の小説)
ふらんけんしゅたいん
Frankenstein, or the Modern Prometheus

イギリスシェリー夫人(メアリー・ウルストンクラフト・シェリー)の長編小説。1818年刊。バイロン、シェリーとジュネーブ滞在中、現実離れした恐怖とサスペンスで当時流行したゴシック小説を競作しようという提案で書き出された作品。青年フランケンシュタインは、錬金術から自然科学にわたる研究の結果、生命の秘密を探り当て、電気治療などを応用して人間をつくりだす。醜悪な外見のため人間社会から疎隔され、また知能は赤子同然のその人造人間の復讐(ふくしゅう)により、彼は親しい友人を次々に殺される。彼は極地の流氷にまで妖怪(ようかい)を追い詰めるが、疲労と錯乱の果てに死に、妖怪は何処(いずこ)かに去る。理性によって人間は完全になりうるという、当時のロマン主義者に影響を与えたゴドウィンの思想に基づくロマンチックな教育観・人間観と、さらに、当時の自然科学の知識を結び付けた作品であり、後のSFにも多大の影響を与えている。

[佐野 晃]

 この小説は1931年、アメリカのユニバーサル映画社の恐怖映画の一編として映画化(監督ジェームズ・ホウェール)されて大ヒットした。そしてボリス・カーロフ扮(ふん)する人造人間(モンスター)の印象があまりにも強烈であったため、フランケンシュタインをモンスターの名前とする錯覚混乱まで生じた。以後『フランケンシュタインの花嫁』(1935)からメル・ブルックスの『ヤング・フランケンシュタイン』(1974)に至るまで、多く続編パロディーがつくられている。

[森 卓也]

『山本政喜訳『フランケンシュタイン』(角川文庫)』


フランケンシュタイン(Georg von und zu Franckenstein)
ふらんけんしゅたいん
Georg von und zu Franckenstein
(1825―1890)

ドイツの政治家。南ドイツのバイエルン邦政界の有力者の1人。1872年から死去するまでドイツ帝国議会中央党議員を務め、1875年から10年以上議会副議長の地位にあった。ドイツ帝国の連邦制的構造の保持、各邦の権利を主張し、1879年の帝国税制改定の際、一定額を超える帝国政府の収入を各邦に配分することを定めたいわゆる「フランケンシュタイン条項」を盛り込んだことで知られる。

[木村靖二]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フランケンシュタイン」の意味・わかりやすい解説

フランケンシュタイン
Franckenstein, Georg Arbogast, Freiherr von und zu

[生]1825.7.2. ウュルツブルク
[没]1890.1.22. ベルリン
ドイツの政治家。 1847年以来バイエルンの上院議員として反プロシア的立場をとったが,ドイツ統一後,72年には帝国議会議員となり,中央党のリーダーとして活躍。財政通として重んじられ,79年にビスマルクが保護関税の導入と増税を提案したとき,関税およびたばこ税による帝国収入のうち,1億 3000万マルクを超過する部分を人口割で各邦に分配するという「フランケンシュタイン条項」を示し,これがいれられた。また社会立法にも強い影響力を及ぼした。

フランケンシュタイン
Frankenstein

映画や大衆文学に現れた最も著名な怪物の一つで,死体から造られた人造人間。イギリスの女流作家 M.シェリーの,ゴシック小説と SFの混合ともいうべき同名の小説 (1818) において創造された。スイスのオカルト研究家フランケンシュタインが巨人を造り出し,結局は自分の醜さに絶望した巨人によって殺される物語だが,のちには怪物がそう呼ばれるようになった。 1931年のボリス・カーロフ主演の映画以来,たびたび映画化された。

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