フリクソス(読み)ふりくそす(その他表記)Phrixos

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フリクソス」の意味・わかりやすい解説

フリクソス
ふりくそす
Phrixos

ギリシア神話ボイオティアの王アタマスの子。母ネフェレーの去ったのち、父が再婚したイノの継子(ままこ)いじめに彼は苦しめられる。ある年、イノは焙(あぶ)った小麦の種籾(たねもみ)をひそかに畑に播(ま)いて、作物不作を招く。そしてアタマスが送ったデルフォイへの使者に、フリクソスをゼウスへの犠牲に供すれば凶作はやむとの嘘(うそ)の神託を報告させる。やむなくアタマスがフリクソスを人身御供(ひとみごくう)に捧(ささ)げようとしたとき母のネフェレーが彼と妹のヘレーとを金毛の羊に乗せて逃がした。金毛の羊は空を飛び、途中ヘレーは海へ落ちたが、フリクソスはコルキスに到着してアイエテス王の娘と結婚する。金毛の羊はゼウスに捧げられ、その皮はアイエテス王に与えられた。のちにこの金の羊毛皮を目ざして、アルゴナウタイの遠征が行われることになる。

[伊藤照夫]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フリクソス」の意味・わかりやすい解説

フリクソス
Phrixos

ギリシア神話の人物で,アタマスとネフェレの息子。アタマスと結婚したカドモスの娘イノは,この先妻の息子とその妹のヘレを憎み,彼らをゼウスヘのいけにえに捧げさせようとした。しかしゼウスは,ネフェレの祈りに答え,ヘルメスを介して彼女に空を飛ぶ金毛の羊を与えたので,兄妹はその背に乗って逃げることができた。空を飛んでいく途中で,ヘレは,以後彼女の名にちなみヘレスポントスと呼ばれることになる海峡に落ち溺死したが,フリクソスは無事に黒海の奥のコルキスに運ばれ,そこでアイエテス王の娘カルキオペと結婚し,彼を救ってくれた羊をゼウスに感謝の犠牲に捧げ,その毛皮は義父に贈った。 (→アルゴ船 , 金毛羊皮 )

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世界大百科事典(旧版)内のフリクソスの言及

【おひつじ座(牡羊座)】より

…黄道十二宮の一つ。ギリシア神話では,父王に憎まれた兄妹フリクソスとヘレを乗せて黒海東岸のコルキスまで飛ぶ金毛の牡羊で,途中妹のヘレを落としたところがヘレスポントス海(現,マルマラ海)であるという。ギリシア時代には春分点はこの星座にあり,〈牡羊の原点〉と呼ばれていたが,現在では歳差運動によって春分点は東隣のうお座に移っている。…

【雲】より

…そして妊娠したネフェレから生まれたのが,上半身が人間で下半身が馬の好色で乱暴な怪物ケンタウロスたちであるという。雲女のネフェレは,後に人間の王アタマスと結婚し,フリクソスという息子とヘレという娘を産んだが,アタマスはそのあとでネフェレを離別しテーバイの王カドモスの娘イオを妃に迎えた。しかし自分の産んだ子どもたちがイオに迫害され殺されそうになると,ネフェレはゼウスから空を飛ぶ金の毛の牡羊を与えられ,フリクソスとヘレをそれに乗せて故国から脱出させた。…

※「フリクソス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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