金羊毛皮(読み)キンヨウモウヒ

デジタル大辞泉 「金羊毛皮」の意味・読み・例文・類語

きんようもうひ〔キンヤウモウヒ〕【金羊毛皮】

原題、〈ドイツDas goldene Vlies グリルパルツァーの3部作の戯曲。1821年、ウィーンにて初演ギリシャ神話題材とする。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「金羊毛皮」の意味・わかりやすい解説

金羊毛皮(ギリシア神話)
きんようもうひ

ギリシア神話に現れる呪物(じゅぶつ)的宝物。ボイオティアの王アタマスは、先妻ネフェレーとの間にフリクソスとヘレーの兄妹をもうけたが、後添いのイノは継子(ままこ)たちを憎み、殺そうとする。イノは、煎(い)った麦を蒔(ま)かせて国土を凶作にしたうえその対策をデルフォイの神託に尋ねさせ、使者に「フリクソスとヘレーを犠牲にすべし」との偽りの神託を伝えさせる。しかし、2人が犠牲の祭壇に引き出されたとき、ネフェレーがヘルメスより授けられた金毛の羊を彼らに与え、2人はその背に乗って空を飛んで逃げる。ヘレーはのちにヘレスポントスと名づけられた海に墜落したが、フリクソスは黒海のかなたコルキスの地に到着し、そこのアイエテス王に婿として遇される。そして羊はゼウスへの犠牲とされ、その金の毛皮アレスの杜(もり)の竜の監視下に置かれた。のちに、この羊毛皮を求めて、アルゴ船の乗組員たちの冒険旅行が行われる。

[中務哲郎]


金羊毛皮(グリルパルツァーの戯曲)
きんようもうひ
Das goldne Vlies

オーストリアの劇作家グリルパルツァーの戯曲。ギリシア伝説に題材をとり、『客人』『アルゴーの人々』『メデイア』の3部よりなる。1821年ウィーンで初演、22年刊。ギリシアの英雄ヤーゾンは金羊毛皮奪還のためコルヒスに渡る。王と王子殺害し、金羊毛皮を手にして、王女メデイアとともに帰国するが、野蛮人を妻としたため王にいれられず、彼の心は、かつての許婚者クレウーザに移る。異国風習になじみ、夫の心をつなぎとめようとする努力も報われず、子供たちにも背かれるメデイアは夫と子供の殺害にまで追い詰められる。近年上演されるのは『メデイア』のみ。

[佐藤自郎]

『相良守峯訳『金羊皮』(1926・岩波書店)』

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