不作(読み)フサク

デジタル大辞泉 「不作」の意味・読み・例文・類語

ふ‐さく【不作】

作物のできが悪いこと。 秋》豊作
人や作品などのできが悪いこと。「文芸作品不作の年」
[類語]凶作凶荒飢饉

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精選版 日本国語大辞典 「不作」の意味・読み・例文・類語

ふ‐さく【不作】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( ━する ) 耕作しないこと。
    1. [初出の実例]「年来之間不見不作弁来之処」(出典高野山文書‐仁安三年(1168)一一月日・太田庄沙汰人等愁状)
    2. [その他の文献]〔史記‐趙世家〕
  3. ( 形動 ) 作物の出来が悪いこと。また、そのさま。凶作。違作。《 季語・秋 》 〔撮壌集(1454)〕
    1. [初出の実例]「文明十五不作、為当起目立」(出典:上杉家文書‐(年月日未詳)(室町)長尾飯沼氏等知行検地帳)
  4. 一般に、作品などのできの悪いこと。また、失敗作などをもいう。

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改訂新版 世界大百科事典 「不作」の意味・わかりやすい解説

不作 (ふさく)

中世に,作付けせず放置してある田畠をいい,年貢・公事(くじ)の免除地。ただ,非課税地であるが,洪水で耕作不能となった川成かわなり)とは区別された。作付けしない期間の長短などにより,当不,年不(ねんぷ),常不,永不のような別がみられた。当不は,〈夏分不作〉のごとく,半年もしくは1年ぐらいの短期間の休耕地を意味した。年不の場合は,数年にわたり作付けされないこともあった。しかし,それはまだ棄地(すてち)となったわけではない。当不や年不は耕作者・年貢負担者が定まっており,彼らに満作化の努力が求められたのである。ところが,常不・永不などは,作付けが困難であるため,棄地として長期間放置された田畠をいう。中世後期では,これを荒(あれ)・荒所(あれしよ)とも称した。また,常不,永不などの場合,おのずと名主職百姓の保有権も消失し,いわゆる無主地となっていった。

 不作となる条件は,灌漑用水の不備,地力の低下,天候異変のような自然的なものだけでなく,人為的なものもあった。その一は戦乱である。田畠がそのために踏み荒らされたり,百姓等が巻きぞえを恐れて一時的に避難したためである。その二は,生活の窮乏などによる百姓等の逃死亡である。このような人為的条件による不作は,人手さえあれば満作化は比較的容易であった。たとえば,鎌倉中期には,百姓の逃死亡により不作になると,預所・地頭がいっしょに浪人招き双方で召し使うことが傍例となっていた。地頭の力が強くなると,不作を自領の中に取り込め,下人等にあて作らせることも多くなった。

 なお,百姓等の政治的力量の成長とともに,鎌倉後期の検注以降,不作・川成などの田数が固定化する傾向にあった。また15世紀に入ると,守護が国人領主等に対する特権賦与として,大田文の田数の一部を不作とし,課役を免除することがみられるようになった。戦国期には,開発を前提として,領主は家臣に〈不作の在所〉をもあてがった。そして,開発を促すとともに,開発されると再び役を課した。

 なお,不作ということばは,中世後期になると,作物のできが悪いという意味でも用いられるようになった。
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世界大百科事典(旧版)内の不作の言及

【荒田】より

…荒廃した田畠の総称で,年貢,公事の免除地。検注帳などでは,常荒(じようこう),年荒(ねんこう),荒,不作(ふさく)のような区別がみられた。常荒とは,かつて田畠として開発されたが,地質,地勢などの条件によりほとんど収穫が望めないため,長い間放置されたままの荒地をいう。…

【損亡】より

…中世,荘園や公領の田畠が天災・戦乱などの被害で不作となること。この時代は農業技術の未熟から作柄が不安定な耕地が多く,少々の自然災害で損亡が発生した。…

※「不作」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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