フリュニコス(その他表記)Phrynichos

改訂新版 世界大百科事典 「フリュニコス」の意味・わかりやすい解説

フリュニコス
Phrynichos

同名3人のギリシア人が知られている。いずれも生没年不詳。

(1)180年ころ活躍したと推定される文法学者。古典期アテナイの悲劇・喜劇散文文体を理想として厳密に遵守する〈アッティカ風擬古文〉運動の代表的な推進者となり,古典の規範にかなう単語を集成した《動詞名詞選》を作成して,古典期の名文を模倣するよう唱導した。この《動詞名詞選》そのものは残っていないが,その摘要が《アッティカ単語選》という題で現在まで伝えられている。

(2)前6世紀末から前5世紀初めにかけてアテナイで活躍した悲劇詩人。テスピスと並び称される最初期の悲劇詩人のひとりであるが,残存しているのはごくわずかの断片のみである。

(3)前5世紀末ころアテナイで活躍した喜劇詩人。その作品《ムーサイ》では,アリストファネスの《蛙》と同じ構想の下にソフォクレスの死を悼み,同じ機会(前405)に上演したが,2位に甘んじたと伝えられている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フリュニコス」の意味・わかりやすい解説

フリュニコス
Phrynichos

前5世紀のギリシアの喜劇作家。アリストファネスのライバルとしてしばしば言及されているが,作品は断片的に伝わるのみである。『一徹屋』 Monotroposの主人公は大の人間嫌いであるが,その性格設定はメナンドロスら新喜劇先駆をなすものであったかもしれない。『酒宴の客たち』 Kōmastaiは,前 415年のアルキビアデスらの事件を扱ったものであり,今日これが伝わらないことは惜しまれる。『詩女神たち』 Mūsaiでは前 406年ソフォクレスの死の直後,大悲劇作者の死をいたむミューズらがコロスとして登場している。ローマ帝政期の大学者ディデュモスが注釈書を著わしたといわれるが,これも伝わっていない。

フリュニコス
Phrynichos

前 500年頃アテネで活躍したギリシアの悲劇詩人。テスピスとともに悲劇創始者の一人代表作フェニキアの女たち』 Phoinissai。

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世界大百科事典(旧版)内のフリュニコスの言及

【タナトス】より

…ホメロスではヒュプノス(〈眠り〉)の兄弟,ヘシオドスではニュクス(〈夜〉)の子とされるが,いずれも抽象的な存在にとどまる。人格神としての彼は,英雄ヘラクレスがタナトスと格闘してアルケスティスを救うエウリピデスの悲劇《アルケスティス》や,シシュフォスにより河神アソポスの娘の誘拐犯人と暴露されて怒ったゼウスが,シシュフォスのもとへタナトスを遣わしたところ,狡猾なシシュフォスはタナトスをだまして縛り上げたため,軍神アレスがそのいましめを解くまで,しばらく死者が出なかったという前5世紀の作家フリュニコスの伝える話などに見いだされる。【水谷 智洋】。…

※「フリュニコス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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