テスピス(読み)てすぴす(英語表記)Thespis

翻訳|Thespis

日本大百科全書(ニッポニカ) 「テスピス」の意味・わかりやすい解説

テスピス
てすぴす
Thespis

古代ギリシアで紀元前6世紀後半に活躍したとされ、悲劇の発見者とよばれる人物。悲劇の競演アテナイアテネ)で国家的行事と定められたが、前534年、テスピスはさっそくこれに合唱隊を率いて登場し、自分はひとり離れた長として合唱隊相手の対話を行い、この第一俳優なるものの創始によって悲劇発展の基礎を確立したという。また、断片すら残っていないが、作品を書き、仮面の導入のほか、盛時の悲劇が備える体裁を整えたのも彼の功績と伝えられる。だが、これらの伝承はすべて遠い後代にみいだされるものであり、はたして現存の悲劇がどの程度までテスピスの発明に負うているかは定めることができない。やはり伝説的人物とみなしておくべき存在であろう。

[細井雄介]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「テスピス」の意味・わかりやすい解説

テスピス
Thespis

前6世紀のギリシア,イカリア詩人。前 534年頃,アテネの演劇祭の競演で優勝。ディオニュソス神への賛歌であるディチュランボスの合唱のなかに,独白や対話を導入した最初の詩人で,ギリシア悲劇の祖とされる。また,仮面を使用した最初の人とされている。

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