化学辞典 第2版 「フレロフ」の解説
フレロフ
フレロフ
Flerov(Flyorov), Georgii Nikolayevich
ロシアの核物理学者.ロシア・ロストフ生まれ.レニングラード工科大学で核物理・熱力学を専攻.1940年ごろからウランの核分裂の研究を行っており,イギリス,アメリカ,ドイツの核分裂分野の異常な沈黙に気づき,1942年4月,当時カザンに疎開していた旧ソ連科学アカデミーにこれを訴え,旧ソ連の原子爆弾開発に結びつけたといわれる.第二次世界大戦後,しばらくはモスクワ石油研究所で核物理の石油探査への応用を研究していたが,1953年ごろから複合核問題に興味が移り,新元素合成をめざし,モスクワ原子力エネルギー研究所の150 cm サイクロトロンによる炭素などの重イオン加速に成功した.科学アカデミー会員のI.V. Kurchatovの支持を受け,1957年にはドゥブナの原子核合同研究所にFlerovを所長とする核反応研究所(Laboratory of Nuclear Reactions)が開設され,1960年から重イオン加速用310 cm サイクロトロンを駆使して,超ウラン元素合成に精力的にあたった.102番元素ノーベリウムから107番元素ボーリウムの合成にローレンス・バークレー研究所のG. T. Seaborg(シーボーグ),A. Ghiorsoグループと熾烈な競争を展開し,105番元素ドブニウムはその成果の一つである.Flerovの没後も活発な研究は続き,113,114(フレロビウム),115,116(リバモリウム),118番元素合成は同研究所から報告された.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報