プレータ(その他表記)preta[サンスクリツト]

改訂新版 世界大百科事典 「プレータ」の意味・わかりやすい解説

プレータ
preta[サンスクリツト]

古代インドの宗教に現れる死者霊。〈去った者〉〈死者〉を意味する語で,バラモン教では,とくに死亡してから1年間,つまり火葬をはじめとするさまざまな儀礼と,最後に行われるサピンディー・カラナ(合霊祭)によってピトリpitṛ(祖霊)の列に加えられるまでの間の死者霊を指す。祭祀の対象となる祖霊に昇格する前の不浄の死者霊である。ところが死者に対し上述の一連の儀礼が,子孫が絶えてしまうなどの理由で行われない場合,死者霊は不浄のまま,さらに攻撃的になってさまようことになる。後代にはこのような亡者を指しても用いられている。さらに,このような儀礼による供物を絶たれた霊は飢渇にさいなまれ,あさましい物を食し,あさましい姿をとると考えられた。プラーナに現れるこのプレータの姿は,仏典にみられるプレータ(餓鬼)の姿に等しい。ただし,ヒンドゥー教のプレータは祭祀を絶たれた者であるのに対し,仏教のそれは,前世で食物に対するむさぼりの心の強かった者が餓鬼道に落ちるというように,業と輪廻の世界観で合理化されているのが特徴である。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「プレータ」の意味・わかりやすい解説

プレータ
preta

サンスクリット語で,死者または祖霊の意。のちに転じて悪鬼の意となった。仏典では餓鬼と訳される。祖霊は飢えていて供物が供えられるのを待っているからである。

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世界大百科事典(旧版)内のプレータの言及

【鬼】より

…【中村 茂子】
[鬼と仏教]
 〈おに〉の観念に仏教が及ぼした影響は小さくない。仏教では〈死者〉(プレータpreta)の漢訳語に〈鬼〉の字を使っている。ただし,この死者は六道輪廻(りんね)のうちにあり,絶えず飢えているので,〈餓鬼〉という熟語で呼ばれている。…

【八部衆】より

…またこれとは別に,四天王の配下とされる八部衆がある。(1)乾闥婆,(2)毘舎闍(ぴしやじや)(ピシャーチャPiśāca),(3)鳩槃荼(くはんだ)(クンバーンダKumbhāṇḍa),(4)薛茘多(へいれいた)(プレータPreta),(5)竜,(6)富単那(ふたんな)(プータナーPūtanā),(7)夜叉,(8)羅刹(ラークシャサRākṣasa)。このうち(2)と(8)は食人鬼の一種。…

※「プレータ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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