日本大百科全書(ニッポニカ) 「プログレシビズム」の意味・わかりやすい解説
プログレシビズム
ぷろぐれしびずむ
Progressivism
革新主義と訳され、20世紀初頭の1900年代から10年代にアメリカに展開した広範な政治・社会改革運動をさす。19世紀後半からのアメリカの急速な変化が、多くの旧来の政治・社会機構を混乱させ、この運動を生起せしめた。改革の内容はきわめて多様であり、社会的には、産業・工場生産の大規模化に伴う労資関係の調整、都市化・移民の大量流入をめぐる社会集団関係の改善、また政治的には、行政需要の増加に伴う市政改革・州政治改革、さらには全国的な大企業の出現に伴う連邦政治レベルでの企業規制の運動などがあった。改革を担った社会層も多様であったが、彼らに共通していたのは、この間の急速な工業化、それに伴う社会変動を基本的には是認し、その全体的な活動をより包括的な、国家規模の新しい合理的な秩序によって整合していこうとする、機能的・統合的社会への指向であった。この間の改革を通して、女性・児童労働の保護、労災保障法などの労働立法が実現し、市委員会制などの導入による市政の構造改革がみられ、ダイレクト・プライマリー(直接予備選)、イニシアティブ(人民発議権)、レファレンダム(法案投票権)などの新しい州政治システムが定着し、連邦政治においても連邦上院議員の直接選挙などが実現した。
他方、独占規制の面では、1913年から14年のウィルソン政権期に、連邦準備制度の成立のほか、連邦取引委員会とクレートン法が生まれ、資本主義と大企業の活動を規制するとともに、より広く合理化する新しい国家機構が確立した。
[紀平英作]
『関西アメリカ史研究会編著『アメリカ革新主義史論』(1973・小川出版)』