日本大百科全書(ニッポニカ) 「プロトコル命題」の意味・わかりやすい解説
プロトコル命題
ぷろとこるめいだい
protocol sentence 英語
Protokollsatz ドイツ語
プロトコルは「記録」「証書」の意であるが、哲学でプロトコル命題というと、直接経験しうる事柄についての観察を述べた命題のことである。論理実証主義は、プロトコル命題およびこれから命題論理の操作によってつくられた命題だけを意味のある命題とすることにより、形而上(けいじじょう)学を哲学から追放しようとした。しかしプロトコル命題として、感覚所与について述べた命題を考えるか、物理学のことばで記述される事実命題を考えるかについては、論理実証主義者の間でも意見が分かれた。さらに、命題論理の操作だけでは法則を表す命題が書けないことが明らかになるにつれ、プロトコル命題の意味も変わった。すなわち、述語論理の形式で表される理論のなかの原子命題文が、プロトコル命題としての地位を得るようになった。近ごろは、命題と理論とを分離しないで考える傾向が強くなり、プロトコル命題ということはあまり論ぜられなくなった。
[吉田夏彦]