日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヘラアナゴ」の意味・わかりやすい解説
ヘラアナゴ
へらあなご / 篦穴子
Dana duckbill eel
[学] Nessorhamphus danae
硬骨魚綱ウナギ目ヘラアナゴ科に属する海水魚。東北地方沖の太平洋、沖ノ鳥島周辺、インド洋・太平洋の熱帯域、スリナム・ギアナ以南の大西洋海域に広く分布する。体は伸長し、前方に向かってとがり、尾部に向かって細長くなる。頭部の後方でやや細くなる。肛門(こうもん)は著しく後方にあり、体のおよそ前3分の2に開く。頭部は長く、鰓孔(さいこう)は胸びれ基底部付近に開く。吻(ふん)は長く突出し、縦扁(じゅうへん)してへら状になる。和名はこれに由来する。両鼻孔(びこう)は吻端近くに位置する。上顎(じょうがく)は下顎よりも前方に突出する。口は目の中央下近くまで開く。上下両顎歯は細かな円錐(えんすい)状で幅広い歯帯をなす。背びれは胸びれの先端上方から、臀(しり)びれは肛門の直後から始まり、尾びれとつながる。背びれと臀びれの鰭条(きじょう)は尾端近くでくびれる。胸びれは長く、およそ吻長に等しい。側線はよく発達し、肛門前側線孔数は77~79。体は一様に黒褐色で、全長約60センチメートルになる。水深450~850メートルにすむ。レプトセファルス(葉形(ようけい)幼生)期を経る。属名のNessorhamphusは「アヒルの嘴(くちばし)」を、種小名のdanaeは「調査船ダナ号」に由来する。ヘラアナゴ科にはヘラアナゴ属Nessorhamphusとクビナガアナゴ属Derichthysの2属があり、後者のクビナガアナゴDerichthys serpentinusは吻と両顎が短く、両顎がくちばし状でないこと、頭の後方が明瞭(めいりょう)にくびれることなどで、ヘラアナゴ属と区別できる。
[尼岡邦夫 2019年11月20日]