日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヘルナンデス」の意味・わかりやすい解説
ヘルナンデス
へるなんです
Amado V. Hernandez
(1903―1970)
フィリピンの詩人、作家、脚本家。第二次世界大戦中は抗日ゲリラ、戦後は労働運動および人権擁護運動の指導者として活躍。1951年より6年間モンテン・ルパ刑務所に留置される。この体験は以後、数々の作品となって実を結ぶ。それらの作品を通じ、フィリピン民衆の苦悩を描き出すとともに、その苦悩からの脱却の道と希望のありかを示唆する。長編小説『捕われの鳥』(1969)はフィリピン小説の傑作の一つとみなされている。詩集『一隅の空』(1961)で政府より文化賞を受けている。また小説『鰐(わに)の涙』(1963)の一部は日本語訳がある。そのタガログ語文体は、従来の装飾的で華麗なものとは異なり、口語に近く平易で、高踏的理念の表現にも適していた。死後73年に彼の文学活動に対し国家芸術賞が授与された。
[山下美知子]