日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベスゴ」の意味・わかりやすい解説
ベスゴ
べすご
axillary seabream
[学] Pagellus acarne
硬骨魚綱スズキ目タイ科ヨーロッパダイ亜科に属する海水魚。ビスケー湾からベルデ岬、地中海、カナリア諸島など東大西洋の沿岸に分布する。ときどき、デンマークから報告されている。体は長紡錘形でやや側扁(そくへん)する。吻(ふん)は短く、若干丸みを帯びるのが特徴。目は著しく大きく、眼隔域(左右の目の間隔域)は平坦(へいたん)で、幅が広く、そこに鱗(うろこ)はない。両顎(りょうがく)前部には絨毛(じゅうもう)状の歯帯があり、側部には弱い2列の小臼歯(しょうきゅうし)が並ぶ。日本産のタイと違って両顎前部にある大きい犬歯はない。体は暗褐色~紫褐色で、腹部は銀白色を帯びた淡紅色。胸びれ基部に顕著な1個の暗褐色斑(はん)がある。尾びれと臀(しり)びれは淡色で、いくぶん赤みを帯びる。最大体長は約36センチメートルで、普通は25センチメートル。成魚は水深40~100メートルの藻場(もば)や砂底などに生息し、若魚は岸近くでみられる。雑食性であるが、多毛類、軟体動物、小形甲殻類を好む。大部分の個体は最初が雄であるが、2~7年後、全長17~30センチメートルで雌になる。釣り、底引網、刺網(さしあみ)などで漁獲される。地中海沿岸ではもっとも一般的な食用魚の一種である。日本に輸入される量はきわめて少ないが、スミレダイ、ヒメダイ、カスミダイ、ギンサクラダイ、クロザクラ、クロバなどの商品名で流通している。ベスゴの呼び名はポルトガル、アルジェリア、マルタ島系の方言である。
[赤崎正人・尼岡邦夫 2017年9月19日]