日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベラー」の意味・わかりやすい解説
ベラー
べらー
Robert Neelly Bellah
(1927―2013)
アメリカの社会学者。ハーバード大学出身。ハーバード大学教授、カリフォルニア大学バークリー校の社会学教授を歴任。その後同大学名誉教授。おもに日本とアメリカを中心にして近代化とポスト・モダニズム、価値志向と宗教倫理の関連性に研究の焦点を据えている。タルコット・パーソンズの影響を受けて、最初は日本の近代化と伝統的価値の関係について石田梅岩(ばいがん)の思想を中心に研究。日本近代の価値志向を探るための鎌倉仏教、家永三郎(いえながさぶろう)(1913―2002)、和辻哲郎(わつじてつろう)らの研究もある。ベトナム戦争へのアメリカ国内の批判が高まる1970年ごろから、アメリカ個人主義の負の側面の増殖にこそ現代のもっとも深刻な問題があるとし、アメリカの個人主義とその歴史的背景としての価値志向および宗教に関する論考や実証的共同研究を数多く行うようになった。なかでもアメリカの伝統的文化資源である健全な倫理的個人主義(「心の慣習=モーレス」)の鮮明化に努め、安定的民主社会や充実した生のための制度・個人のあり方、すなわち彼のいう「善(よ)い社会」の文化的、社会的、心理的メカニズムを究明して注目された。
[口羽益生]
『R・N・ベラー著、堀一郎・池田昭訳『日本近代化と宗教倫理』(1962・未来社)』▽『R・N・ベラー著、河合秀和訳『社会変革と宗教倫理』(1973・未来社)』▽『R・N・ベラー著、葛西実・小林正佳訳『宗教と社会科学のあいだ』(1974・未来社)』▽『ロバート・N・ベラー著、松本滋・中川徹子訳『破られた契約――アメリカ宗教思想の伝統と試練』(1983/新装版・1998・未来社)』▽『R・ベラー、R・マドセン他著、島薗進・中村圭志訳『心の習慣――アメリカ個人主義のゆくえ』(1991・みすず書房)』▽『R・ベラー、R・マドセン他著、中村圭志訳『善い社会――道徳的エコロジーの制度論』(2000・みすず書房)』▽『R・N・ベラー著、池田昭訳『徳川時代の宗教』(岩波文庫)』