翻訳|ecology
本来は、生物と環境、生物同士の相互作用を一体的に理解しようとする生態学を意味する英語。環境破壊や生物種の絶滅などが深刻化する中で、生態学的な考えの重要度が高まり、環境保全対策を進める上でも注目される概念となった。エコロジー運動、エコロジストといった言葉も生まれ、環境保護活動自体を示す意味でも使われるようになった。
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( 1 )( ①について ) ギリシア語で、住まいを意味するオイコス oikos と学問 logos とを合成して、一八六六年ドイツの生物学者E=H=ヘッケルが ökologie (「すみかの研究」の意)を造語し、生物とその環境及び共生者との関係を研究する科学と定義した。それを英語化したものが ecology で、日本では明治時代に「生態学」と訳した。
( 2 )( ②について ) アメリカで大規模汚染が進行し、一九六〇年代から人間をも含めて環境をどうするかという環境科学の領域が生まれた。環境は生態系でもあるところから、生態学が環境科学の中心を占めてきた。アメリカの化学者スワローがヘッケルの用語を自らの反公害の社会運動に使用して広まった。
元来は、環境と生物との相互関係を研究対象とする学問である生態学をさす。エコロジーecologyという語は、19世紀ドイツの生物学者E・H・ヘッケルが、古代ギリシア市民の住居と生産の場を兼ねた家を意味するギリシア語のオイコスoikosと、学問を意味するロゴスlogosという語を合成してつくった、Ökologieというドイツ語の英語表記である。
近年、環境破壊や資源枯渇の問題が鋭く認識されるに至って、これらの問題がきわめて一般的に、かつ深刻に語られるようになり、その結果、このエコロジーという語は、生態学さらには自然科学の領域を超えて、人間の生存条件、そのあり方を考えるうえで不可欠なことばとなった。また最近では、学問上の用語であることにとどまらず、環境保護や自然との調和を意味する日常的な表現になっている。
[宮川中民]
政治、文化、社会におけるエコロジー的感性の総合的表現であるエコロジスムecologismは、一つのまとまった学問体系や学説をさすのではなく、自然と人間との共生を志向する思想であり感性である。こうした思想や感性をもった人たちをエコロジストecologistという。元来エコロジストとは、絶滅のおそれがある動植物の種の保存に努めたり、環境破壊や公害を告発する人々をさしたが、1970年代以降、いままでとは異なった以下に記すような運動を展開するエコロジストとよばれる人たちが、新たな政治勢力として世界各地に登場してくる。
1972年にストックホルムで開かれた国際連合人間環境会議において、生態系の破壊と種の消滅、公害の増大、エネルギー資源の枯渇、人口の増大、第三世界の飢餓など、工業化に伴う地球の危機や世界の環境問題が議論され、人間環境宣言、行動計画などが採択された。このような時代的背景のもとに出現したのが、エコロジストたちによるエコロジー運動といわれる政治、社会運動であり、その運動のもっとも重要な母体の一つとして、1960年代末から1970年代初頭にかけて世界各地で起きた「若者反乱」をあげることができる。エコロジー運動は、自然保護運動、地域主義運動、地球の危機を自覚した人々の運動などが重なり合い、発展したものである。この運動は、とりわけ集会やデモを表現手段としていたが、いままでの社会運動とは異なって、統一した組織も指導部ももたず、「星雲のごとく」といわれたように、分散した形で、各地でみられた。
この運動に参加したエコロジストたちは、反原子力発電所運動を核として、日常生活、消費社会、生産力至上主義、テクノクラート支配から、学校、医療に至るまで、告発の対象を広げていき、「より少なく消費して、よりよい生活を」というスローガンにみられるように、量よりも質を重視して、小規模化、非集中化、自立性などを課題とする運動を展開する。このようなエコロジストの批判や主張の中心には、近代ヨーロッパの価値観や科学技術至上主義に対する批判があった。西ヨーロッパ諸国では、エコロジスト運動は議会にまで進出しており、たとえばドイツの緑の党は、1983年の国会議員選挙において27の議席を獲得した。
その後エコロジー運動は離合集散していくが、京都議定書(1997)で温室効果ガスの削減が地球規模の課題になるにつれ、かつての観念的、哲学的議論を離れ、より身近な具体的問題に取り組むようになった。しかしフランスにおいては、1960年代末に起きた若者反乱が残したものは大きく、いまなお当時の活動家が率先して運動を行っている。たとえばヨーロッパ議会選挙(2009年6月)や地方選挙(2010年3月)において、1968年5月の学生運動(五月革命)の立役者ダニエル・コーンベンディットが率いるヨーロッパ・エコロジーは、パリをはじめとするフランスの主要都市で社会党に匹敵する20%を超える票を獲得している。
[宮川中民]
人間の経済活動は、社会現象であると同時に、自然現象としての側面をもっている。それは自然のなかにあって、自然から資源を採取し、生産、消費の過程とともに、自然になんらかのものを廃棄する活動である。いいかえれば、人間の経済社会は、地表の自然の部分系(サブシステム)であり、自然環境との間に絶えざる相互作用をもっている。
この相互作用について十分な配慮を欠く場合、経済活動の進行とともに、自然からの反作用がさまざまな形の困難、障害をもたらし、ときには社会の存続を危うくすることもある。このような問題は、戦後の経済成長によって生じた環境破壊や資源エネルギー問題を通して、広く人々に意識されるようになった。
そしてこうした経験を通して、新しい学問的な課題が現れてきたといえる。それは、エコロジーを中心とする自然科学の諸分野と、経済学などの社会科学の協力のなかで、自然と経済の相互作用の現実をよく認識し、自然との関連での経済社会のあるべき姿を明らかにしていくという課題である。このような課題にこたえるべき分野として、諸科学の協力による「環境科学」が形をなしつつあり、また経済学に限っても、「環境経済学」「生物経済学」「エコロジー経済学」などの名称のもとに、新しい試みが行われている。
このようなエコロジー的な考察によって与えられる、経済社会への要求のうちで、およそ合意が得られていると思われる事項を記せば、(1)自然環境における生物種の多様性と豊かな植生を、回復し保存していくこと、(2)太陽光線のエネルギーに依拠すること、(3)農業と工業の両面において資源リサイクリングを実現していくこと、(4)地下資源の利用(合成物質、放射性物質の利用を含む)は、地表の生態系に重大な変化を与えることのないよう、抑制と配慮をもってすること、などである。当然、新しい産業技術の進歩も、このようなエコロジー的要求を満たすのに寄与したり、あるいはそれを満たしたりする範囲内での変化、展開でなくてはならないのである。
[神里 公]
『アンドレ・ゴルツ著、高橋武智訳『エコロジスト宣言』(1983・緑風出版)』▽『レイチェル・カーソン著、青樹簗一訳『沈黙の春』新装版(2001・新潮社)』▽『ドミニック・シモネ著、辻由美訳『エコロジー』(白水社・文庫クセジュ)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
(高橋牧子 朝日新聞記者 / 2008年)
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…エコロジーともいう。生物学の一分野であるが,どのような範囲を指すかは研究者によって異なり,定義は一定しない。…
※「エコロジー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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