改訂新版 世界大百科事典 「ペキンダック」の意味・わかりやすい解説
ペキンダック (北京ダック)
中国原産のペキン種と呼ばれる卵肉兼用のアヒルの通称。また,これを材料とする北京料理として有名な烤鴨子(カオヤーズ)を指す。生後50日前後のアヒルに高タンパク質の練り餌を1日2~4回,機械で胃の中へ押し込む強制給餌を行う。この特別に肥育したアヒルを内臓を抜いて空気でふくらませたものを,あめを全身に塗って乾かす。これを烤炉と呼ぶかまど(竈)の中につるしてナツメやアンズの薪で焼く。途中,したたり落ちる油に香料と調味料を加えたものを何度も表面に塗る。焼きたてをうすくそぎ切りにし,小麦粉でうすいハスの葉状に作った餅(ピン)に,甘みそやネギ,キュウリのせん切りといっしょにくるんで食べる。この料理ほど有名ではないが,アヒルの加工品として南京板鴨がある。アヒルの生肉を香辛料などを入れた塩水につけ,陰干しにしたもので,板状のものを水でもどして蒸したり,スープの材料にする。中国でアヒルに関する記録は古くからあるが,現在のような烤鴨子は1855年の便宜坊の開店ごろからであろう。
執筆者:正田 陽一+田中 静一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報