ペトロ・カナダ(読み)ぺとろかなだ(その他表記)Petro-Canada

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ペトロ・カナダ」の意味・わかりやすい解説

ペトロ・カナダ
ぺとろかなだ
Petro-Canada

カナダ最大の石油および天然ガスの総合企業。1975年にカナダ連邦政府によって国営の石油・天然ガスの総合企業として設立された。設立当初の目的は外国資本、とくにアメリカ系の石油資本による石油および天然ガス資源の独占を阻止することであったが、その後のカナダ国内における政治状況、経済状況の変化、そしてNAFTA(ナフタ)(北米自由貿易協定)の締結という状況の変化に対応するために、当初の目的も変更された。徐々に株式の公開も進んで、段階的に民営化され、1998年のカナダ政府の株式所有比率は発行済み株式総数の18%にまで低下した。しかし、現在でもカナダの石油開発および精製部門での主導的役割を果たしている。民営化は油田開発と天然ガス開発に必要な資金調達が目的の一つと考えられる。

 ペトロ・カナダは、業務の上流分野では原油、天然ガス、液化天然ガス探索・開発、下流分野では原油の精製と販売を行っている。上流分野では北大西洋沿岸にあるヒベルニアHiberniaの油田開発が最大の事業目標になっている。この開発のためにカナダの主要な石油会社によって企業共同体が形成されているが、ペトロ・カナダはその中核企業である。さらに、カナダ西部での油田および天然ガスの開発にも取り組んでいる。ペトロ・カナダは多くの石油関連企業への資本参加の動きを強化し、国内だけでなくアメリカ合衆国でもニューイングランドミシガンで業務を展開。海外ではアルジェリアロシアベトナムでの油田開発にも資本参加を進めている。このように現在のペトロ・カナダの戦略はカナダ国内だけでなく世界的な石油および天然ガス事業への展開がその目標である。今後、新興国市場の成長に伴い大きく伸びる可能性がある。2007年の売上高は38億USドル、純利益26億USドル。日産量平均は石油41万8400バレル、天然ガス5億9900万立方メートル。従業員数は世界で5600人を超えている(2007)。

[芦澤成光]

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世界大百科事典(旧版)内のペトロ・カナダの言及

【カナダ】より

…73年に,〈外国投資審査法〉Foreign Investment Review Act(施行は1974年,75年)が成立し,雇用機会の拡大や資源加工度の向上,それに技術開発の促進などの〈カナダ経済に顕著な利益をもたらす〉外資のみが認可されることになった。またそれに先立つ1971年に,カナダ企業の乗っ取り防止とカナダ人所有企業の強化育成を図るためにカナダ開発会社Canada Development Corp.が,そして75年に石油と天然ガス資源の開発と安定供給をめざして国策会社ペトロ・カナダPetro‐Canadaが設立された。また,こうした一連のナショナリスティックな政策の最後を飾ったのが,80年10月に発表された〈国家エネルギー計画〉であり,90年までにエネルギー自給をめざしエネルギー部門のカナダ化を進めることを宣言したものであった。…

※「ペトロ・カナダ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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