液化天然ガス(読み)エキカテンネンガス(英語表記)liquefied natural gas

デジタル大辞泉 「液化天然ガス」の意味・読み・例文・類語

えきか‐てんねんガス〔エキクワ‐〕【液化天然ガス】

天然ガス主成分であるメタンや、プロパンブタンなどを冷却し液化したもの。燃焼に際し、石油などに比べ、二酸化炭素の排出量が少ないといわれる。LNG(liquefied natural gas)。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

共同通信ニュース用語解説 「液化天然ガス」の解説

液化天然ガス(LNG)

メタンが主成分の天然ガスを超低温に冷却し液体にしたもので輸送や貯蔵がしやすいのが特徴。日本では電力会社やガス会社が大量に輸入している。東京電力福島第1原発事故後の原発停止で、火力発電の燃料としての利用が急増した。日本の主な輸入国はオーストラリアマレーシアカタールなど。米国でシェール層にある天然ガスが技術革新で商業生産できるようになり、調達先は多様化した。天然ガスの価格下落でガス田の新規開発資金の不足が世界的に問題になっている。

更新日:


液化天然ガス(LNG)

メタンを主成分とする気体の天然ガスを、運搬や貯蔵がしやすいように冷却し、液化したもの。都市ガス発電所の燃料に使われる。石炭に比べ、燃焼時の二酸化炭素(CO2)の排出量が少ない。日本は長らく世界最大の輸入国だったが、2021年に中国が最大となった。電力、ガス、商社などの企業がLNGの売り主と10~20年単位で購入契約を結ぶか、市場から短期で購入して調達する。

更新日:

出典 共同通信社 共同通信ニュース用語解説共同通信ニュース用語解説について 情報

精選版 日本国語大辞典 「液化天然ガス」の意味・読み・例文・類語

えきか‐てんねんガスエキクヮ‥【液化天然ガス】

  1. 〘 名詞 〙 ( ガスは[オランダ語・英語] gas ) 天然ガスの主成分であるメタンを冷却液化したもの。石油系燃料とくらべ公害の心配がなく、火力発電所の燃料などに用いられる。LNG。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「液化天然ガス」の意味・わかりやすい解説

液化天然ガス
えきかてんねんがす
liquefied natural gas

天然ガスを精製後、冷却液化したもので、LNGとよばれる。成分はほとんどがメタンなのでLMG(liquefied methane gas)とよぶ場合もある。天然ガスは石油と並んで重要な燃料資源、化学原料である。原油を生産する際に同時に出てくる油田ガスもメタンが主成分であり、従来は用途がないので油田で燃やして捨てられていたが、現在は貴重な燃料資源として現地での利用や回収が行われている。メタンガスは燃焼しても無公害であり、かつ取り扱いやすい燃料である。天然ガスの産地から消費地まで陸続きの場合はガスのままパイプラインで送ることができるが、消費地が海を隔てて遠い場合は利用できなかった。しかし、これを液化すれば容積が約600分の1になり、タンカーにより海上輸送が可能となる。天然ガスは産地で零下162℃に冷却液化後、LNGタンカーで輸送し、消費地で気化して使用する。液体メタンの比重は0.424で石油のおおよそ倍の容積となること、液化に際しても多量のエネルギーを必要とすることのほか、輸送用タンカーやタンクは、低温度に耐える金属材料でつくられた特殊構造のものを使用することなどに留意する必要がある。液化天然ガスを気化するときの冷熱エネルギーは電力として回収するほか、食品の冷凍などにも利用される。日本には、オーストラリア、アラスカブルネイ(ボルネオ島北岸)をはじめ東南アジア諸国から、また中東諸国の油田ガスも液化天然ガスとして輸入されている。都市ガスは石炭ガスからしだいに天然ガスに転換されてきており、さらに電力、工業用燃料として大量に使用されている。

[真田雄三]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「液化天然ガス」の意味・わかりやすい解説

液化天然ガス (えきかてんねんガス)
liquefied natural gas

略称LNG。メタンを主成分とする天然ガスを加圧,冷却して液化したもの。天然ガスの産地の多くは都市や工業地帯などの天然ガスの大消費地からは遠い。また石油とともに産出される油溶性ガスも消費地から遠いために,むだに燃されていた。ところで,メタンは-161℃に冷却すれば液体となり,その体積は常温・常圧の気体に比べて約1/600に減少する。これを専用の冷凍タンカー(LNGタンカー)で海上輸送すれば,遠い消費地までも経済的に配給することができる。LNGの本格的なタンカー輸送は,1964年,アルジェリアの天然ガスのイギリスへの輸出によって始まった。日本でも70年前後からLNGの輸入が盛んになり,アラスカ(1969年に開始,以下同様),ブルネイ(1972),アブ・ダビーインドネシア(ともに1977)などから80年には合計約1700万t/年のLNGが輸入されている。これは世界全体のLNGの国際貿易量の約60%に相当する。日本はエネルギーの供給源の多様化を目指しており,その政策の一環として,将来もLNGの輸入量が大きく増える見込みである(95年の輸入量は約4300万t/年で,輸入先は上記のほかにマレーシア,オーストラリアが加わり,アジア・オセアニア地域で全輸入量の88%を占めている)。

 産地で液化された天然ガスはLNGタンカーで運ばれるが,LNGの比重は原油の比重の約1/2であるため,同一重量のLNGを運ぶためには原油タンカーの2倍の大きさのタンカーが必要である。そのうえLNGタンカーは保冷のために特殊の材料(ニッケル鋼やアルミニウム合金)や構造が要求されるので,積載トンあたりの建造費は原油タンカーの数倍も高い。LNGの受入れ基地ではLNG専用のタンクにLNGを貯蔵し,これを再びガス化して発電用や都市ガス用の燃料として使用する。ガス化には海水や工場の温排水が利用されるが,LNGのもつ冷熱を積極的に利用する事業として,空気の液化分離,食品などの冷凍・冷蔵,海水の淡水化などが実施,あるいは計画されている。
冷熱利用
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「液化天然ガス」の意味・わかりやすい解説

液化天然ガス【えきかてんねんガス】

メタンを主成分とする天然ガスを−161℃に冷却・液化したもの。LNG(liquefied natural gasの略)とも。天然ガスは,消費地から遠い土地に産するため利用が遅れていたが,液化して冷凍タンカーで輸送する方式が考えられた。日本は石油に大きく依存していたエネルギー供給のアンバランスをただすため1969年から輸入開始。アラスカ,ブルネイ,アブダビ,インドネシアなどから輸入しており,大部分は発電用燃料,都市ガス原料に利用される。また,LNGのもつ冷熱利用として食品の冷凍・冷蔵事業も行われている。
→関連項目ガス事業電源ベストミックスフロン代替材料

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「液化天然ガス」の意味・わかりやすい解説

液化天然ガス
えきかてんねんガス
liquefied natural gas; LNG

メタンを主成分とする天然ガスを,-162℃まで冷却して液化したもの。体積は気体のときの約 580分の1となり,断熱耐圧容器に充填して貯蔵および輸送をすることができる。事前に除塵,脱硫,脱炭酸,脱湿などの処理が行われているので,燃料としては最高の品質であるが,冷却,貯蔵,輸送,再ガス化などにおいて安全性確保のための技術を必要とする。天然ガスは成分にメタン,エタンを多量に含み,発熱カロリーも高く硫黄分の含有が少いため環境への影響が比較的小さいことなどから日本では環境保護や,不安定なエネルギー構造への対応策の一つとして 1969年から輸入が開始され,火力発電燃料や都市ガスなどの多量のエネルギー供給源として利用されているほか,工業用燃料,化学原料としても利用されている。日本では新潟,秋田,千葉などで産出する。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

化学辞典 第2版 「液化天然ガス」の解説

液化天然ガス
エキカテンネンガス
liquefied natural gas

略称LNGまたはLMG(liquefied methane gas).メタンを主成分とする天然ガスを加圧冷却して液化したもの.近年,天然ガスの海上輸送法として,液化して冷凍タンカーで運ぶ方法が発達した.わが国でも,都市ガス用,発電用,化学工業原料用として,また最近ではCO2排出割合の少ないクリーンな燃料として,海外から液化天然ガスの大規模な輸入が行われている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

知恵蔵 「液化天然ガス」の解説

液化天然ガス

「液化石油ガス」のページをご覧ください。

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

栄養・生化学辞典 「液化天然ガス」の解説

液化天然ガス

 −162℃で液体であり,かつこの温度で固体になる物質を除去した天然ガス.プロパン,エタン,メタンなどが主成分.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の液化天然ガスの言及

【ガス事業】より

…他方,都市ガスの原料は石油危機後,急速に多様化している。すなわち昭和40年代の後半以降,従来の石炭系ガスから石油系ガスへのシフトが進んだが,石油危機後は石油系ガスも急減し,これに代わってLNG(液化天然ガス)とLPG(液化石油ガス)が急増している。原料構成は,石油危機当時の1973年度には石炭系23%,石油系42%,LNG24%,LPG10%であったが,これが80年度には石炭系10%,石油系17%,LNG54%,LPG19%へと大きく変化した。…

※「液化天然ガス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android