液化天然ガス(読み)えきかてんねんがす(英語表記)liquefied natural gas

日本大百科全書(ニッポニカ) 「液化天然ガス」の意味・わかりやすい解説

液化天然ガス
えきかてんねんがす
liquefied natural gas

天然ガスを精製後、冷却液化したもので、LNGとよばれる。成分はほとんどがメタンなのでLMG(liquefied methane gas)とよぶ場合もある。天然ガスは石油と並んで重要な燃料資源、化学原料である。原油を生産する際に同時に出てくる油田ガスもメタンが主成分であり、従来は用途がないので油田で燃やして捨てられていたが、現在は貴重な燃料資源として現地での利用や回収が行われている。メタンガスは燃焼しても無公害であり、かつ取り扱いやすい燃料である。天然ガスの産地から消費地まで陸続きの場合はガスのままパイプラインで送ることができるが、消費地が海を隔てて遠い場合は利用できなかった。しかし、これを液化すれば容積が約600分の1になり、タンカーにより海上輸送が可能となる。天然ガスは産地で零下162℃に冷却液化後、LNGタンカーで輸送し、消費地で気化して使用する。液体メタンの比重は0.424で石油のおおよそ倍の容積となること、液化に際しても多量のエネルギーを必要とすることのほか、輸送用タンカーやタンクは、低温度に耐える金属材料でつくられた特殊構造のものを使用することなどに留意する必要がある。液化天然ガスを気化するときの冷熱エネルギーは電力として回収するほか、食品冷凍などにも利用される。日本には、オーストラリアアラスカブルネイ(ボルネオ島北岸)をはじめ東南アジア諸国から、また中東諸国の油田ガスも液化天然ガスとして輸入されている。都市ガス石炭ガスからしだいに天然ガスに転換されてきており、さらに電力、工業用燃料として大量に使用されている。

[真田雄三]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「液化天然ガス」の意味・わかりやすい解説

液化天然ガス
えきかてんねんガス
liquefied natural gas; LNG

メタンを主成分とする天然ガスを,-162℃まで冷却して液化したもの。体積は気体のときの約 580分の1となり,断熱耐圧容器に充填して貯蔵および輸送をすることができる。事前に除塵,脱硫脱炭酸,脱湿などの処理が行われているので,燃料としては最高の品質であるが,冷却,貯蔵,輸送,再ガス化などにおいて安全性確保のための技術を必要とする。天然ガスは成分にメタン,エタンを多量に含み,発熱カロリーも高く硫黄分の含有が少いため環境への影響が比較的小さいことなどから日本では環境保護や,不安定なエネルギー構造への対応策の一つとして 1969年から輸入が開始され,火力発電燃料や都市ガスなどの多量のエネルギー供給源として利用されているほか,工業用燃料,化学原料としても利用されている。日本では新潟,秋田,千葉などで産出する。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報