日本大百科全書(ニッポニカ) 「ペロー童話集」の意味・わかりやすい解説
ペロー童話集
ぺろーどうわしゅう
Contes de Perrault
フランスの詩人であり作家のシャルル・ペローの童話集。1697年刊。正確な表題は『すぎた昔の物語ならびに小話』Histoires ou Contes du temps passé。扉に「がちょうおばさんの話」Contes de ma mère l'Oyeとあり、この名でよばれてもいる。「がちょうおばさんの話」とは民話の古称で、当時は「老婆の話」といった呼び名もあった。20世紀の音楽家ラベルも、ペロー童話を題材とした組曲『マ・メール・ロア』を作曲している。
ペロー童話集は、民間伝承の昔話をペローが創作童話化したものだが、発表されたときには、当時10歳の末子ピエール・ペロー・ダルマンクールの名が作者名として記されていた。内容は、「眠れる森の美女」「赤ずきんちゃん」「青ひげ」「ねこ先生または長靴をはいた猫」「仙女たち」「サンドリヨンまたは小さなガラスの靴(シンデレラ)」「まき毛のリケ」「親指小僧」の、簡潔で明快な文体をもって書かれた八編の散文からなり、各編の終わりには教訓moralitéが添えられている。ペローには、ほかに、韻文による三編――「グリゼリディス」「ろばの皮」「愚かな願いごと」を集めた『韻文童話集』Contes en vers(1694)もある。現在では前記の散文童話集と一括して『ペロー童話集』としている。ペローの童話は、児童文学としてだけではなく、フォークロア、民話、幻想文学の源泉として高く評価されている。
[窪田般彌]
『新倉朗子訳『ペロー童話集』(岩波文庫)』